山田洋次

庶民の日常を温かく描く名匠
山田洋次監督作「たそがれ清兵衛」(2002)が22日(金)に日本テレビ系で放送。義理と人情に弱い“寅さん”が主人公の長寿シリーズ“男はつらいよ”('69~'95)に代表されるように、一貫して庶民の生活に焦点を当て、彼らの素朴で朗らかな生き方を描きつづけてきた山田監督。高度経済成長の波にのみ込まれながらも、砕石運搬船の仕事をしてたくましく生きる夫婦の姿を描写した「故郷」('72)。刑務所帰りの男が、偶然出会った若い男女とともに、妻のいる家へと向かう「幸福の黄色いハンカチ」('77)では、世代を超えた人のつながりを感動的に映し出し大ヒットに。ほかにも、田舎に住む父と都会に暮らす息子との不器用な交流を描いた「息子」('91)、夜間学校、職業訓練校などの学校を舞台に、教育問題を扱った“学校”シリーズ('93~2000)と、社会からはみ出した人たちの哀歓や孤独を温かく描いた多くの名作を生み出す。刺激的な展開や映像で見せる作品が多い現代の映画の中で、古きよき日本の日常風景をとらえ、暴力シーンのない穏やかな雰囲気をもつ山田作品はまれな存在であり、それが広い層に彼の作品が愛され続ける理由だといえる。2002年には、山田監督同様に、一貫して市井の人々を描いた藤沢周平の小説を原作に「たそがれ清兵衛」で初の本格的な時代劇に挑戦。武士を主人公にしながら、物語のメーンを、決闘シーンではなく家族との日常生活に置き、リアリズムを追求した。藤沢の小説の映画化は「隠し剣 鬼の爪」(2004)、現在公開中の「武士の一分」(2006)と続いており、これらは時代劇3部作と呼ばれている。75歳を迎えながらも、いまだ製作に意欲的な山田監督の次回作は、戦時中の東京を舞台に、治安維持法違反で検挙された父親の帰りを待つ母子の姿を描く「母べえ」。山田作品に久々の出演となる吉永小百合が主演を務める。

PROFILE
'31年9月13日、大阪府豊中市生まれ。2歳のとき一家で満州に渡り、ハルピン、大連など各地を転々とする。'46年、山口県宇部市に移住。'49年、東京大学法学部に入学し、2年間映画研究会に所属する。卒業後、'54年に松竹大船撮影所に入社。川島雄三、野村芳太郎らの助監督や脚本執筆を経て、'61年に「二階の他人」で監督デビュー。ハナ肇主演の“馬鹿”シリーズ3部作('64)をはじめとする人情喜劇で頭角を現す。国民的人気を博し松竹の看板作品となった“男はつらいよ”シリーズは、全48作という驚異的な長寿シリーズとしてギネスブック入り。これまで海外の映画賞にはあまり縁がなかったが、「たそがれ清兵衛」は米アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ話題となった。

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