寺尾聰
物静かな中年男役で存在感を放つ2世俳優
主演作「博士の愛した数式」(2005)が19日(土)にフジ系で放送。劇団民藝を設立した日本演劇界を代表する俳優兼演出家の故宇野重吉を父親に持つ寺尾。現在はすっかり映画俳優としての印象が強い彼だが、元々は歌手として人気を集めてきた。サングラスをかけ、ニヒルな表情で歌った「ルビーの指環」が大ヒットを記録し、第23回('81年度)日本レコード大賞など、その年の音楽賞を総なめに。そんな彼が俳優として注目されたのは、黒澤明監督作品に出演し始めたころから。シェークスピアの悲劇「リア王」を下敷きにした戦国時代絵巻「乱」('85)では、一文字家の長男に扮し、オムニバス「夢」('90)では、黒澤自身の分身ともいえる“私”の役で8話中の6話に主演。「まあだだよ」('93)では、主人公・内田百閒の弟子の1人を演じるとともに、ナレーションを担当した。40年近くに及ぶ俳優人生の中で強く影響を受けたのは、黒澤監督の「自然に演じなさい」という言葉と、がんに侵されながらも執念で舞台に立ち続けた父親の存在だったという。'99年、黒澤監督の遺稿を、彼の助監督だった小泉堯史が映画化した時代劇「雨あがる」では、武芸の達人だが人の良さが災いして職に就けない武士を細やかに演じ、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。アルツハイマー病を患った妻を殺害した現職警官に扮した「半落ち」(2003)で2度目の日本アカデミー賞に輝いた。物静かな中年男役がぴたりとはまり、近年は、連続TVドラマ初主演を飾った倉本聰脚本による「優しい時間」(2005)や、交通事故の後遺症で80分しか記憶を持続できない天才数学者役に挑んだ「博士の愛した数式」などで深い印象を残す。また、スティーブン・セガール主演の「イントゥ・ザ・サン」(2005)では海外進出を果たすなど、精力的な活動を続けている。
PROFILE
'47年5月18日、神奈川県横浜市生まれ。'64年、グループサウンズ“ザ・サベージ”を結成、ベース担当として'66年にデビュー。「いつまでもいつまでも」「この手のひらに愛を」がヒットするものの、翌年脱退。'68年、石原裕次郎が製作、主演を務めた「黒部の太陽」で映画初出演。以後、石原プロダクションに所属し、TVドラマ・シリーズ「大都会PARTIII」「西部警察」の刑事役で知名度を上げる(後に石原プロダクションを離れる)。'75年、山田洋次監督作「同胞」の主役に抜てき。'90年代後半からは、「失楽園」('97)、「CASSHERN」(2004)、「亡国のイージス」(2005)といった話題作に多数出演した。2005年、18年ぶりに歌手活動を再開。昨年は「ルビーの指環」を収録したヒットアルバム「Reflections」をリメークした「Re-Cool Reflections」を発売している。