北野武
自らを“壊して”進化を続ける“世界のキタノ”
監督兼主演作「座頭市」(2003)が3日(日)にテレビ朝日系で放送。先日まで開催されていたカンヌ国際映画祭のレッドカーペットに、和服にちょんまげのかつら姿で登場して相変わらずのやんちゃぶりを発揮した北野監督。2日(土)から公開になる新作「監督・ばんざい!」(2007)でも、その内容の奇想天外ぶりが話題となっている。そもそも「ソナチネ」('93)や「HANA-BI」('97)など、青を基調とした“キタノブルー”といわれる映像や、暴力や死をテーマに独特の静けさや哀愁を漂わせる作風で知られる北野監督。だが、彼の作品は一方で「みんな~やってるか!」('94)「TAKESHIS'」(2005)などの、いわゆる“ぶっとんだ”顔も持っている。最近では「TAKESHIS'」「監督・ばんざい!」と後者の作品が続き、観客に多少なりとも混乱を呼んでいるが、過渡期ともいえるこの2作で、彼は“自分を壊しにかかっている”と発言している。得意の暴力映画を撮らないと宣言した映画監督キタノがあらゆるジャンルの映画に挑戦しては失敗するという「監督・ばんざい!」のストーリーは、北野監督自身が“バイオレンス”など勝手に決め付けられた自分の映画に対する固定したイメージを、一度ぶち壊したいという意志の表れでもある。また、初めてエンターテインメントに徹してつくりあげた「座頭市」では相当のフラストレーションを感じたようで、その不満も「監督・ばんざい!」のような映画を撮ることにつながっているという。それを“膿を取って修復するような気分”と表現する彼は、“もうちょっと無茶をやったら、いずれは正統派大作やエンターテインメント映画を撮りたい”とも語っている。彼が何年先かに“膿”を出し切った後、一体どのような巨匠へと進化していくのか楽しみだ。
PROFILE
'47年1月18日、東京都足立区生まれ。明治大学工学部を2年で中退後(2004年に特別卒業認定者として卒業資格を授与された)、芸人を志し、浅草のストリップ劇場でエレベーター係として働き始める。幕間コントに出演しながらコントやタップダンスの修行に励み、'78年、兼子二郎(現ビートきよし)と漫才コンビ“ツービート”を結成。“ビートたけし”の芸名でTVを中心に活躍する。'83年には、大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」に出演し、俳優としても注目を浴びるように。'89年、当初深作欣二監督作として企画された「その男、凶暴につき」を主演を兼ねて初監督。その後もタレント活動と並行して映画を撮りつづけ、'97年、「HANA-BI」でベネチア国際映画祭金獅子賞に輝く。さらに2003年にも「座頭市」で同映画祭監督賞を受賞し、“世界のキタノ”の名を世に知らしめた。2005年からは、東京藝術大学大学院映像研究科の教授に就任している。