香川照之
人間の複雑な内面をリアルに見せる演技派俳優
出演作「出口のない海」(2006)が19日(日)にテレビ朝日系で放送。ここ数年、演技派俳優として破竹の勢いで頭角を現してきた香川。'88年にデビューした彼は、以来10年ほどオリジナルビデオ界での活動がメーンで映画への出演は少なかった。そのターニングポイントとなったのは、“今までのゆるかった血を全部抜かれて、熱い血を輸血で注ぎ込まれた作品”とまで語るほど、チアン・ウェン監督にしごき倒されたという中国映画「鬼が来た!」(2000)だ。単身で中国へ乗り込んだ過酷な撮影環境の中、中国の小さな村の農民たちに捕らわれた日本兵役を、鬼気迫るほどエネルギッシュに演じ切った。「鬼が来た!」はカンヌ映画祭グランプリを受賞し、彼は一躍注目を浴びる。その後は、「独立少年合唱団」(2000)では小学校教師、「北の零年」(2004)では腹黒く野蛮な男、はたまた「明日の記憶」(2006)での敏腕サラリーマンなど、カメレオン俳優といっても過言ではないほどさまざまな役柄を演じ、存在感を放ってきた。とりわけ、都会で自由に暮らす弟への劣等感と嫉妬(しっと)にゆがんだ実家に残る兄を演じた「ゆれる」(2006)では高い評価を受ける。善と悪とを併せ持つ、人間のドロドロとした複雑な内面をリアルに見せる彼の持ち味がうまく発揮されており、この作品で数々の映画賞を受賞したのも納得のいくところだ。表面をなぞるだけではなく、生身の感情をさらけ出すような彼の熱い演技には、円熟期を前にして、まだまだ未知の可能性を感じさせる。エリート検事を演じた「HERO」(9月8日[土]公開)、全編英語の台詞に挑んだ日本版西部劇「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」(9月15日[土]公開)と、次々と公開を控える新作も期待大だ。
PROFILE
'65年12月7日、東京都出身。父は歌舞伎俳優の市川猿之助、母は元宝塚歌劇団のトップ娘役で女優の浜木綿子という芸能一家に生まれるが、'68年に両親が離婚し、母方に引き取られる。東京大学文学部を卒業間近に俳優を志し、TVドラマ「空き部屋」('88)でデビュー。2000年「独立少年合唱団」でブルーリボン賞を受賞。2006年には「ゆれる」の名演でキネマ旬報助演男優賞と2度目のブルーリボン賞を受賞している。映画のみならず、お茶の間に名を浸透させた「利家とまつ 加賀百万石物語」(2002)、「救命病棟24時」(2005)などのTVドラマや舞台、CMなどでも活躍。執筆活動でも才能を発揮し、「キネマ旬報」に長年連載しているエッセーも独特の語り口で好評を得ている。私生活では'95年に結婚し、2004年に長男が誕生。熱狂的なボクシングファンという一面もある。