堤幸彦
娯楽作良し感動作良しの器用な映像作家
監督作「トリック 劇場版」(2002)が11月11日(日)テレビ朝日系で放送。シニカルでテンポよい笑いと、凝ったカメラワークや編集による斬新な映像が魅力の堤。その魅力で現在、日本映画界の第一線で活躍する堤だが、実は最初から映画の世界を目指していたわけではない。CM、ミュージックビデオ、TVのバラエティー番組などのディレクターと、さまざまなジャンルで活躍し、そこで磨かれた独特のセンスによって“ケイゾク”('99)、“トリック”(2000-2005)などのTVドラマをヒットさせた。人物の顔を半分しか映さない撮り方や、画面を湾曲させ異様な雰囲気を作リ出すなどのインパクトある映像と、連発されるギャグや登場人物たちの絶妙な掛け合いが新味で多くのファンを獲得。それらの映画化により映画界でも知名度を上げた堤は、青春群像コメディー“ピカ☆ンチ”シリーズ(2002、2004)なども成功させる。そんな娯楽作品で定評のある堤が、渡辺謙プロデュースによる「明日の記憶」(2006)で新たな一面を開花。若年性アルツハイマー病と向き合う夫婦の姿を描くという重いテーマのこの作品。堤の“人間を見る目”を買って監督に起用したという渡辺がにらんだ通り、夫婦愛、病を患った主人公の苦悩をしっとりと、また激しく表現した。人間の機微を丁寧に描き、これまでと違う質感の作品で観客を驚かせた堤は、他人の心を癒やそうとする中で、自分自身に向き合っていく10代の少年少女たちの姿を描いた「包帯クラブ」(2007)や、不器用な男性と彼に尽くす女性の愛が温かい「自虐の詩」(2007)など、心情重視の作品を続けて制作。最新作としては、TVドラマ「スシ王子!」(2007)を映画化したコメディー「銀幕版 スシ王子! ニューヨークへ行く」、竹中直人と吉永小百合ふんする夫婦の愛を描く「まぼろしの邪馬台国」、浦沢直樹の人気コミックを実写映画化するサスペンス・アドベンチャー「20世紀少年」とバラエティー豊かな作品が目白押しだ。
PROFILE
'55年11月3日愛知県名古屋市生まれ。法政大学を中退し専門学校にて映像を学ぶ。卒業後は、TV製作会社に所属。その後、秋元康と映像製作会社を設立していたこともある。映画デビューは、'88年にオムニバス・コメディー「バカヤロー! 私、怒ってます」('88)の中の第4話「英語がなんだ!」。この作品の後、しばらく“堤ユキヒコ”で活動。大の音楽好きでバンド活動もし、また舞台の演出でも才能を発揮している。そのほかの作品としては「2LDK」(2002)、「恋愛寫眞 Collage of Our Life」(2003)、「サイレン FORBIDDEN SIREN」(2006)、「大帝の剣」(2007)などがある。