森田芳光
多様な意欲作を発表しつづけ、日本映画界を牽引する監督
監督作「間宮兄弟」(2006)が1日(火)にテレビ東京系で放送。'81年、青春グラフィティー「の・ようなもの」で、助監督の経験もない新人がいきなり劇場映画に進出するという、当時では画期的なデビューを果たした森田。落語家たちのとぼけた日々に焦点をあて、風俗嬢や、女子高生、都会人などの人物像を新しい視点で描き、雰囲気が面白い作品としてその才能を世間に知らしめた。出世作である'83年の「家族ゲーム」では、松田優作ふんする風変わりな家庭教師を迎えた一家の姿をユーモラスに描いた。独創的な画面構成と辛らつな人間観察眼、シニカルなユーモア、斬新な演出が高く評価され数々の映画賞を独占。以降「ときめきに死す」('84)、「そろばんずく」('86)「悲しい色やねん」('88)「キッチン」('89)「おいしい結婚」('91)など、話題作を次々に発表。'96年の「ハル」では、パソコンの字幕画面が作品の大半を占めるという実験的手法にも挑戦し、恋愛映画として魅了しながらも、映像表現への飽くなき開拓精神を見せつける。そして、'97年には、渡辺淳一原作の「失楽園」を監督。不倫の果てに行き着く男女の“究極の愛”をスタイリッシュな映像でつづり、興行収入40億円を超えるヒットを記録。監督の地位を不動のものにする。その後、「黒い家」、「39 刑法第三十九条」(共に'99)、「模倣犯」(2002)と犯罪ものが続いたが、人間、そして家族を描いてきた監督だったということを思い起こさせるように「阿修羅のごとく」(2003)を発表。翌2004年に、普遍的な人間の愛憎の行く末を具現化したラブストーリー「海猫」。2006年、「間宮兄弟」で久々にコメディーに回帰し、2007年には、直木賞作家・奥田英朗原作の「サウスバウンド」、そして初の時代劇にして名匠・黒澤明監督の「椿三十郎」のリメークに挑んだ。ジャンルにこだわらず、多様な作品をコンスタントに発表しつづける森田。常に娯楽に徹しながらも、実験的な手法を随所に見せ、天才的な演出力と独特の映像技術を持ち合わせる監督として今や、日本映画に欠かせない存在となった。「椿三十郎」という高いハードルを越えた森田が、今後どのようなハードルを自分に課すのか、次回作に期待したい。
PROFILE
'50年1月25日、東京都渋谷区生まれ。丸山町の料亭の息子として生まれ育ち、日本大学芸術学部放送学科に進学。学生時代から8ミリの個人映画の製作活動を精力的に続け、独特の映像感覚を研ぎ澄ましていく。'78年、母の実家のある湘南・茅ヶ崎に移り住んで撮影した8ミリ作品「ライブイン茅ヶ崎」が話題を呼び監督デビューへと繋がった。「椿三十郎」に主演した織田裕二をはじめ、森田の作品に参加した俳優はみな、森田組のスタッフのプロフェッショナルぶりを称える。それぞれが作品に向かう力が強く、彼らの現場での仕事ぶりが俳優の良い演技を引き出すことに一役買っていると言える。監督業以外では、熱狂的な競馬ファンとして知られ、競馬に関するエッセーも出版している。