ハーベー・カイテル
強烈な存在感で幅広い役を演じる個性派
出演作「ナショナル・トレジャー」(2004)が23日(日)にテレビ朝日系で放送。いぶし銀の演技でさまざまな役柄に挑戦しつづけるカイテル。「U-571」(2000)の副艦長をサポートする曹長のような善人役と、「バッド・ルーテナント 刑事とドラッグとキリスト」('92)の悪徳刑事に象徴される極悪人の両極を、違和感なく演じることのできる数少ない俳優である彼の映画デビューは、マーチン・スコセッシ監督の長編第1作「ドアをノックするのは誰?」('68、日本未公開)だった。この作品で、フェリーで出会った女性に恋をするイタリア系アメリカ人青年役を好演。以降、定職に就かず遊んでばかりいながらも、常に罪の意識におびえている若者を演じた「ミーン・ストリート」('73)や、ロバート・デ・ニーロ扮するタクシー運転手に殺される客引きを演じた「タクシー・ドライバー」('76)などに出演し、デ・ニーロと並ぶスコセッシ映画の常連俳優となる。また、それと同時に、アラン・ルドルフ監督の「ロサンゼルス それぞれの愛」('76、日本未公開)や、リドリー・スコット監督の「デュエリスト 決闘者」('77)など、新人監督のデビュー作に好んで出演するようにもなっていく。中でもクエンティン・タランティーノの「レザボア・ドッグス」('91)では、当時まったく無名だったタランティーノの脚本に惚れ込んで資金を提供したほか、自らも出演するなど、製作を全面的にバックアップした。後にスコットやタランティーノが人気監督となっていることからもわかるように、カイテルには新人監督の才能を見抜く独自の感性が備わっている。出演作を選ぶ基準が商業ベースに左右されていないことは、カンヌ映画祭でパルムドールを受賞したジェーン・カンピオン監督の「ピアノ・レッスン」('93)や、ギリシャの巨匠テオ・アンゲロプロス監督の「ユリシーズの瞳」('95)など海外の優れた作品に積極的に出演していることでも顕著だ。'99年に出演したベトナム人監督トニー・ブイの「季節の中で」では、製作総指揮も務め、サンダンス映画祭で史上初となるグランプリと観客賞の同時受賞を果たしている。「ナショナル・トレジャー」の続編「ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記」が21日(金)より公開。カイテルは前作に続き、高位のフリーメイソンでもあるFBI捜査官を演じる。
PROFILE
'39年5月13日、米・ニューヨーク生まれ。17歳で海兵隊に入隊、20歳で除隊後、靴のセールスマンなどを経て、ニューヨーク大学に入学。同大学で演技を学び、盟友スコセッシと出会う。'79年には「地獄の黙示録」の主役に抜擢されるも、監督のフランシス・フォード・コッポラと意見が対立し、降板させられてしまう。'80年代は低迷期を送るが、「レザボア・ドッグス」で脚光を浴びる。「バグジー」('91)では一匹狼のギャングを演じてアカデミー賞助演男優賞に初ノミネート。私生活では、'83年に女優のロレイン・ブロッコと同棲し一女をもうけるが、'94年に関係を解消。2001年、監督兼女優のダフナ・カストナーと結婚している。