アン・リー

人間の内面を巧みに描きつづける、アジア人初のオスカー監督
監督作「グリーン・デスティニー」(2000)が6日(水)にNHK衛星第2で放送。「ブロークバック・マウンテン」(2005)でベネチア国際映画祭の金獅子賞をはじめ、数々の賞を受賞したリー。今や、世界的名監督である彼のデビュー作は、ニューヨークで結婚した息子夫婦を訪ねた父親が、カルチャーギャップにとまどいながらも、交流を持とうとする姿を描いた「推手」('92)。以降の、同性愛を隠した息子が偽装結婚する「ウェディング・バンケット」('93)、愛を模索する3姉妹を描いた「恋人たちの食卓」('94)が「推手」を含めて“父親3部作”と称されている。いずれも両親、とりわけ父親の心情描写が細やかに描かれ、リーが人間ドラマ派の監督であることが、デビュー当初からうかがわれた。そんな彼の名が一躍世界に知られたのは、台湾、香港、中国、アメリカの才能を結集させた「グリーン・デスティニー」。高度なワイヤーワークを駆使したアクションシーンはもちろん圧巻だが、それとともに男女の深い愛の物語も丁寧につむぎ、アカデミー賞外国語映画賞など4部門を受賞。そして2003年、「監督として好奇心を感じた」と言う、マーベル・コミックシリーズのひとつ「ハルク」に挑戦。ワイルドで攻撃的な超人ハルクの世界にもリーは、彼の内面を描くことをブレンドさせ、ハルクをただの怪物にはしなかった。この自身初となるハリウッドメジャー作品をヒットさせたリーは、同性愛者のピュアで痛切な愛の物語「ブロークバック・マウンテン」に取り掛かる。会話の少ない主人公2人の心情を雄大な景色に重ね合わせ、静ひつな場面の中に2人の情熱的な愛を生み出し、見る者の胸をふるわせた本作は、アカデミー賞作品賞に本命視されながらも涙をのむ結果に。しかしながら、監督賞を受賞しアジア人初のオスカー監督となった。「ブロークバック―」を通して人間の心の深い部分に触れる作業を繰り返した彼の新作「ラスト、コーション」は2月2日(土)公開。「ブロークバック―」の姉妹作品とも位置付けられる本作は、1人の女スパイの愛の葛藤を描く官能サスペンスで、リーにとって7年ぶりのアジア帰還作となった。“いい作品を作れば、どこでも通用するものだ”と語るように、過激な性愛描写が物議を醸しながら、ベネチア国際映画祭で2度目の金獅子賞受賞をはじめ、各方面から高い評価を得ている。

PROFILE
'54年10月23日生まれ、台湾出身。'75年に国立芸術専門学校を卒業後、アメリカに渡る。イリノイ州立大学とニューヨーク大学で映画を学び、卒業制作作品が'84年のニューヨーク大学学生映画祭でグランプリに輝いた。「ウェディング・バンケット」('93)「恋人たちの食卓」('94)が2年連続でアカデミー賞外国語映画賞候補になる。以降「アイス・ストーム」('97)「楽園をください」('99)などコンスタントに作品を発表。2月2日(土)に公開される「ラスト、コーション」は“極限の愛のシーン”が話題だが、性表現の限界がある中国では、ベッドシーンの全カットバージョンで公開された。作品の要である場面が全てカットされているが、リー自身がその編集も手掛けており、自身は満足していると言う。

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