マーチン・スコセッシ

一貫して自身のルーツを描きつづける現代アメリカの巨匠
監督作「タクシードライバー」('76)が26(土)に衛星第2で放送。ベトナム帰りの孤独なタクシー運転手の常軌を逸した行動を通し、ベトナム戦争後のアメリカの荒廃を切り取った本作や、暴力と犯罪で彩られたニューヨーク草創期の人々の壮絶な生きざまを描いた「ギャング・オブ・ニューヨーク」(2002)など、故郷であるニューヨークを舞台に多くの作品を作り続けているスコセッシ。そんな“ニューヨーク派”監督の彼は、シチリア系イタリア移民の子としてリトルイタリーで生まれ育った。マフィアが支配する犯罪多発地域ながら、幼いころより映画と教会に慣れ親しみ、神父を目指していたこともあるという。彼の作品づくりにはそんな出自が深く影響している。マフィアにあこがれ、その仲間入りを果たした男の半生を通して、イタリア系マフィアの実態を描いた「グッドフェローズ」('90)、ラスベガスを舞台に、カジノ界の裏側をあぶりだした「カジノ」('95)といったギャングの世界を背景にした重厚な犯罪ドラマがそのひとつだ。香港映画“インファナル・アフェア”シリーズをリメークした「ディパーテッド」(2006)は、警察とマフィア、それぞれに潜入したスパイを軸に、両組織の攻防戦を描いた彼ならではの骨太なギャング映画。オリジナル版と基本設定は同様だが、フィルム・ノワール調の映像や名作へのオマージュなど、スコセッシ流の味付けでアイルランド系マフィアの姿に迫り、見事初のアカデミー賞監督賞を獲得した。
一方、こうした血生臭い殺し合いを描くとともに、全く正反対の世界として、イエス・キリストを愛と性に悩む1人の人間として描いた問題作「最後の誘惑」('88)や、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の半生にスポットを当てた「クンドゥン」('97)といった神や宗教、祈りをテーマにした秀作も生み出している。後者にいたっては、“私の監督作品の中で唯一本当に愛することができる作品”と述べるほど、そのこだわりの強さがうかがえる。
現在は芥川賞作家・遠藤周作の小説「沈黙」を映画化した作品を準備中。鎖国時代の長崎でキリスト教の布教に努めたポルトガル人宣教師の苦悩を描くスコセッシ監督10年来の企画だ。自身のアイデンティティーにこだわり、そのこだわりを強く作品に焼き付けてきた彼が日本の名作をどのように料理するのか期待が高まる。間もなく見られるスコセッシ監督の最新作は「シャッター アイランド」(2010年4月公開)。ある女性患者の失踪事件を調査するため、絶海の孤島に建つ犯罪者用精神病院を訪れた連邦保安官がさまざまな謎に直面する本格ミステリーで、主演のレオナルド・ディカプリオと4度目のタッグを組んだ。

PROFILE
'42年11月17日、アメリカ・ニューヨーク州生まれ。ニューヨーク大学で映画を学び、「ドアをノックするのは誰?」('67未公開)で長編デビュー。これが名プロデューサー、ロジャー・コーマンの目に留まり、彼の製作で「明日に処刑を…」('72)を監督する。'76年には「タクシードライバー」でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞し、一躍有名監督へ。同じイタリア系のロバート・デ・ニーロを好んで主人公に起用し、「ニューヨーク・ニューヨーク」('77)、「レイジング・ブル」('80)、「キング・オブ・コメディ」('83)など数々のヒット作を生んだ。近年はディカプリオとのコンビ作が続いている。また、大のロック好きで知られ、ザ・ローリング・ストーンのライブ・ツアーを追った「ザ・ローリング・ストーン シャイン・ア・ライト」(2008)や、マイケル・ジャクソンのヒット曲「BAD」のミュージック・ビデオなど、音楽関係の映像作品も多数手掛けている。

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