アル・パチーノ

強烈な個性でアメリカ映画史を彩る名優
出演作「ゴッドファーザーPARTIII」('90)が2月13日(土)NHK衛星第2で放送。
数々の作品で圧倒的な存在感を残し、いま最も尊敬される名優としてハリウッド映画界に君臨するパチーノ。ニューヨーク市でシチリア移民の子として生まれ、貧しい生活を送ったパチーノは、いろいろなアルバイトを続けながら俳優を志し、'66年に念願のアクターズ・スタジオに入学する。その後、いくつかの舞台を踏み、'67~'68年度にオビー賞、'69年にはブロードウェイでトニー賞と、演劇界の権威ある賞を連続受賞し、映画界からも注目を集める。そして「ナタリーの朝」('69)の端役で映画デビュー。続く、麻薬中毒の青年を好演した「哀しみの街かど」('71)で初主演をした後、麻薬や暴力、人種差別などアメリカの世相を投影したアメリカン・ニューシネマを代表する俳優になる。さらに、'72年の「ゴッドファーザー」で、自分の意思に反してマフィアのボスに変ぼうしていく青年の凶暴さと冷酷さを堂々と演じきり、その名と実力を世界に知らしめる。
以後、ヒッチハイクでアメリカを横断する2人の男の友情を描く「スケアクロウ」('73)、わいろが横行する署内の腐敗に抵抗したために孤立してしまう刑事の苦闘を演じた「セルピコ」('73)、恋人の性転換手術の費用が欲しくて銀行強盗を決行したゲイの青年を熱演した「狼たちの午後」('75)、司法制度の矛盾と腐敗に挑む、若き理想主義者の弁護士に扮した「ジャスティス」('79)などの主演作で毎年のようにアカデミー賞にノミネートされ、演技派スターとしての地位を確立する。'80年代に入って、出演映画の興行成績が振るわずスランプに陥ったパチーノは、しばらく舞台に専念するが、「シー・オブ・ラブ」('89)の中年刑事役で映画復帰。そして「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」('92)で、目の不自由な退役軍人という難役を見事に演じ上げ、待望のアカデミー賞主演男優賞を受賞。しばし疎んじられていたアクの強さを、見る者を圧倒する演技力と存在感に好転させ、名優パチーノは新たなスタートを切った。
'96年には、パチーノ自身が「最も愛する世界」と公言するシェークスピアのドラマ「リチャード三世」を題材にしたドキュメンタリー「アル・パチーノのリチャードを探して」で監督デビューを果たす。近年の出演作は、全米の批評家から「生涯のベスト・パフォーマンス」と称賛を浴びた「インソムニア」(2002)や、強欲なユダヤ人の商人シャイロックに扮した「ヴェニスの商人」(2004)、助演に徹した「オーシャンズ13」(2007)では、悪玉となるホテル王に扮し、ジョージ・クルーニー、ブラット・ピットら豪華キャストにびくともしない貫録を見せた。2007年には、このような実績に対して、全米映画俳優協会の生涯功労賞など多数の名誉賞がパチーノに贈られた。
最新作としては、“死の医者”と呼ばれる実在の病理学者に扮するTV映画「You Don't Know Jack」(原題)や、シェイクスピアの4大悲劇の一つ「リア王」が今年米国公開予定。これまで数多くのシェイクスピアのキャラクターを演じてきたパチーノだが、リア王を演じるのは今回が初めて。パチーノが満を期して挑む悲劇の老王に期待したい。

PROFILE
'40年4月25日、米・ニューヨークのイースト・ハーレム生まれ。父は保険外交員。パチーノが2歳のときに両親が離婚し、母と祖父母に育てられた。映画デビュー作「ナタリーの朝」で、ヒロインとダンスする青年役として出演。初主演作「哀しみの街かど」が、フランシス・F・コッポラの目にとまり、「ゴッドファーザー」のマイケル役に抜擢される。そのほかの出演作に、アカデミー作品賞を受賞した「ゴッドファーザーPARTII」('74)、ブライアン・デ・パルマ監督の「スカーフェイス」('83)、ロバート・デ・ニーロとの共演も話題となった「ヒート」('95)、報道に命をかけるジャーナリストに扮した史実劇「インサイダー」('99)などがある。テレビでは、「エンジェルス・イン・アメリカ」(2004)でエイズの患者を熱演し、エミー賞ほか数々の賞に輝いた。私生活では、3児をもうけているが結婚はしていない。

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