クリント・イーストウッド
西部劇ヒーローから世界を代表する映画人となった大御所
監督・主演作「許されざる者」('92)が17日(月)、監督作「父親たちの星条旗」(2006)が18日(火)、「硫黄島からの手紙」(2006)が19日(水)に衛星第2で放送。
俳優として半世紀以上のキャリアを誇り、監督として2度のアカデミー賞に輝くイーストウッドは、多くの映画人の尊敬を集めるハリウッドの大御所だ。そんな彼は俳優時代、「荒野の用心棒」('64)のニヒルなガンマンや、“ダーティハリー”シリーズ('71~'88)のアウトロー刑事に代表されるような、正義のためなら暴力も辞さない“武骨なタフガイ”といった役柄で人気を集めた。「恐怖のメロディ」('71)で監督業に進出した後も、「ガントレット」('77)、「ルーキー」('90)など多くの刑事アクションや犯罪ドラマを監督・主演し、バイオレンス・ヒーローとして活躍する。
そんな中、ターニング・ポイントとなった作品が、自身“最後の西部劇”と語る「許されざる者」('92)だ。アカデミー賞を受賞した本作で、イーストウッドは町を牛耳る保安官に制裁を加える老ガンマンを熱演。同時にそれまで演じてきた、暴力に暴力で対抗する“アンチ・ヒーロー”への疑問を作品に込め、高い評価を得た。
以降は、ラブ・ストーリー「マディソン郡の橋」('95)、SFドラマ「スペース カウボーイ」(2000)などさまざまなテーマに挑みながら新しいヒーロー像を模索。泥棒が大統領の殺人隠蔽を暴く「目撃」('97)、しがない記者が無実の死刑囚を救うため奔走する「トゥルー・クライム」('99)といった人間臭い“正義の執行者”や、ロートルのエージェントを演じた「ザ・シークレット・サービス」('93)、隠居中の元FBI捜査官役の「ブラッド・ワーク」(2002)などの老体に鞭打つ老齢の主人公を円熟した演技で体現。ボクシングを題材にした監督作「ミリオンダラー・ベイビー」(2004)では不器用な老トレーナーを好演するとともに、家族の愛と生命の尊厳という深いテーマを精緻なタッチで描き、2度目のオスカーに輝いた。
こうしてベテラン俳優にして巨匠という、唯一無二の映画人となったイーストウッド。そんな彼の集大成的作品が、昨年公開された「グラン・トリノ」(2008)。偏屈で人種差別的な老人が、アジア系移民の少年との交流を通して心を動かされ、彼らを守るために自らを犠牲にするという本作。孤高の“ヒーロー”として己の正義を貫き続けてきた彼の映画人生そのもののような役柄で、世界中から絶賛を浴びた。ことし80歳を迎える彼だが、「インビクタス 負けざる者たち」(2009)に続き、マット・デーモンとタッグを組んだ「Hereafter(原題)」(2010年10月22日全米公開)で初めてのジャンルとなるスリラーへ挑戦、レオナルド・ディカプリオの出演がうわさされる、実在したFBI長官の伝記映画「Hoover(原題)」も準備中と、ますます映画づくりにまい進している。
PROFILE
'30年5月31日、米・カリフォルニア州生まれ。'54年に「半魚人の逆襲」で映画デビューし、'59年TV西部劇「ローハイド」で準主役に抜擢され、注目を浴びる。'64年にはセルジオ・レオーネ監督にイタリアに招かれ、「荒野の用心棒」などのマカロニ・ウエスタンに出演。帰国した後は、自らの製作会社マルパソ・カンパニーを設立。ドン・シーゲル監督と組んだ「ダーティハリー」('71)が大ヒットした。'86年から2年間、カリフォルニア州カーメル市の市長を務めていたこともある。ジャズへの造詣が深く、チャーリー・パーカーの伝記映画「バード」('88)を監督、そのほか多くの監督作で音楽を担当し、「グラン・トリノ」では自身の歌声を披露している。私生活では一度の離婚、女優ソンドラ・ロックとの破局を経て、'96年、ニュースキャスターのディナ・ルイスと再婚した。