是枝裕和

ドキュメンタリーとフィクションの間でリアルな映像を追求する監督

監督を務めた「誰も知らない」(2004)が31日(日)にNHK BSプレミアムで放送。
近作「奇跡」(2011)も好評を博し、世界的にも評価の高い是枝監督は、TVのドキュメンタリー番組の演出家としてキャリアを開始した。江角マキコが主演した'95年の「幻の光」で映画監督デビュー。この作品が第52回ベネチア国際映画祭の金のオゼッラ賞を受賞し、国内外で一躍注目を集める存在となる。
世界30カ国で公開されヒットした、続く2作目の「ワンダフルライフ」('99)では、俳優のアドリブでのセリフ、演技を多用したドキュメンタリー・タッチの映像にドラマを融合させた斬新な作風を開拓する。
この手法は、実際に起きた事件をモチーフに、母親に置き去りにされた4人の子どもたちが必死に生きぬく姿を描いた「誰も知らない」に結実。登場する子どもたちに対して綿密な演出はせず、競演した大人の俳優たちが引き出す、子どもたちの自然でリアルな演技が絶賛される。
中でも一家の長男を演じた柳楽優弥は、カンヌ国際映画祭で史上最年少(当時14歳)で、日本人初となる男優賞を獲得し、大きな話題となった。
以後は岡田准一主演の時代劇「花よりもなほ」(2006)や韓国の女優ペ・ドゥナを主役に据えた「空気人形」(2009)など、物語性を重視した作品を手掛け、新境地を開拓していく。
また、監督業の傍ら、俳優の伊勢谷友介が初監督を務めた「カクト」(2002)や、「ディア・ドクター」(2009)の西川美和監督のデビュー作「蛇イチゴ」(2002)のプロデュースを務めるなど、新人監督の輩出にも力を入れている。
10月1日(土)に公開される「エンディングノート」でもプロデューサーを務めた。監督は是枝監督作のスタッフを務めていた砂田麻美で、彼女が、死の準備を整える自分の余命わずかな父親の姿をとらえたドキュメンタリーだ。

PROFILE
'62年6月6日、東京都清瀬市生まれ。早稲田大学を卒業後、'87年にTV番組制作会社テレビマンユニオンに入社。TVドキュメンタリーを演出し、ギャラクシー賞優秀作品賞をはじめ、多くの賞を獲得する。ほかにCocco「水鏡」(2000)や、AKB48「桜の木になろう」(2011)といったミュージックビデオやCMの演出も手掛けている。2005年より立命館大学産業社会学部客員教授に就任。

ハンフリー・ボガート

“ボギー”の愛称で親しまれたハードボイルド・スター

出演作「カサブランカ」('42)が、25日(月)にNHK BSプレミアムで放送。
美形でもなく、背も高くはないが、内面から漂わせる男くささで人気を博したボガート。“ボギー”のニックネームで親しまれた彼は、襟を立てたトレンチコート姿や、親指と人差し指で吸い口をつまむたばこの吸い方など、特徴あるスタイルで独自の男の美学を見せてきた。
下積み時代は冷酷なギャングや犯罪者役ばかり演じていたが、転機となったのはダシール・ハメットのハードボイルド小説を映画化した「マルタの鷹」('41)。主役の私立探偵サム・スペードをさっそうと演じ、タフでしたたかな新しいヒーロー像を開拓する。
翌年には、メロドラマの傑作「カサブランカ」に主演。過去の愛に苦悩するナイトクラブのオーナー役で、哀愁の中にもダンディズムあふれる演技を披露した。映画はヒットし、一躍彼はトップスターの座に就く。
'44年には「脱出」で共演した25歳年下の女優ローレン・バコールと意気投合。妻と離婚し、バコールと4度目の結婚を果たす。その後彼女とは、「三つ数えろ」('46)など3作で共演している。
「アフリカの女王」('51)では、キャサリン・ヘプバーンふんする女性を手助けし、ドイツ軍の砲艦襲撃に臨む酔いどれ船長を演じた。今までのクールでタフなイメージを覆し、大らかなユーモアと人間味あふれる演技を見せ、アカデミー賞主演男優賞を受賞。
その後も、ハードボイルドなイメージに縛られない幅広い役柄を演じるようになるが、「殴られる男」('56)の主演を最後に喉頭がんで亡くなる。
死後、'60年代に“ボギー”ブームが再燃し、彼の影響を受けた作品や、パロディーも多数製作されている。特にウッディ・アレン脚本・主演の「ボギー!俺も男だ」('72)は、ボガートに心酔する映画評論家が、ボガートの幽霊のアドバイスを受けながら自分を変えようとする物語で、全編「カサブランカ」のオマージュであふれており、ファンには見逃せない作品のひとつだ。

PROFILE
1899年12月25日、米・ニューヨーク生まれ。17歳で高校を中退。海軍に入隊し、第1次世界大戦に参戦した。戦後は家族の友人であるブロードウェーのプロデューサーの事務所で働き始め、次第に端役で舞台に立つようになり、俳優の道へ進む。'30年にハリウッドで本格的に映画デビュー。'40年代に幅広い人気を獲得した後、自らのプロダクションを設立。'56年、妻バコールとの5度目となる映画共演作の準備中に入院。翌年1月14日に死去した。

リュック・ベッソン

観客のためではなく自分のために映画を作りつづけるフランスを代表する監督

監督作「グラン・ブルー完全版 デジタル・レストア・バージョン」('88)が18日(月)にNHK BSプレミアムで放送。
'83年に「最後の戦い」で長編映画デビューを果たして以降、彼の監督作は多くないが、海そのものを映像で映し出すという夢を実現させた海洋ドキュメンタリー「アトランティス」('91)を除く全作品で脚本を執筆。自分の作った物語を、こだわりを持って映像化してきた。常に自分が撮りたい作品を作っている彼は、海洋ロマン“グラン・ブルー”で世界的に注目された。
その後、元妻アンヌ・パリローのために脚本を執筆したアクション「ニキータ」('90)を発表。その姉妹作ともいえる作品で、現在ではオスカー女優となったナタリー・ポートマンのデビュー作「レオン」('94)は今なお根強い人気を誇っており、商業的にも大成功を収めた。
そして、SF大作「フィフス・エレメント」('97)、史劇スペクタクル「ジャンヌ・ダルク」('99)、モノクロのラブ・ストーリー「アンジェラ」(2005)と、さまざまなジャンルを手掛けるも、趣味に走った独りよがりの作品と評価される面もある。
だが一方で、キャリアに関わらず彼がキャスティングした俳優たちはスターとなり、彼自身の熱狂的なファンも多い。そんな彼が、やりたいことはひとまずやりつくしたと、アニメーションという新たなジャンルに挑戦した「アーサーとミニモイの不思議な国」(2006)を含む“アーサー”シリーズ3部作で監督業を引退すると発表。
しかし、「アデル ファラオと復活の秘薬」(2010)のインタビューで引退宣言を撤回しており、今後も独自の世界観で見る者を楽しませてくれることが期待できそうだ。
彼の最新作「アーサー3(仮題)」(2010)がことし6月に開催されたフランス映画祭のオープニング作品として上映された。日本での公開は未定だが、シリーズ完結編に当たる本作の公開が楽しみだ。
ほか、ミャンマーの民主化運動指導者アウンサンスーチーの半生を描く「The Lady(原題)」が製作進行中。

PROFILE
'59年3月18日、仏・パリ生まれ。6歳からダイビングを始め、17歳で潜水中に事故に遭い、映画の世界に。'81年に手掛けた短編「最後から2番目の男」で高い評価を得る。俳優ジャン・レノ、彼の監督作の音楽を多数手掛けるエリック・セラとはこの作品からの付き合い。2001年に製作会社ヨーロッパ・コープを設立し、映画製作者としても活躍中。主な作品は“TAXi”シリーズ('97~2007)や“トランスポーター”シリーズ(2002~2008)など。

ダコタ・ファニング

天才子役から演技派へ階段を着実に上がり続ける女優

出演作「シャーロットのおくりもの」(2006)が11日(月)にNHK BSプレミアムで放送。
「アイ・アム・サム」(2001)で鮮烈な印象を与え映画デビューしたファニング。彼女は幼少期より演じることに強い興味を示し、5歳のときCM出演がきっかけで本格的に芸能界活動を開始、人気TVドラマ「アリー・myラブ」(2000)などにゲスト出演し、注目を集めた。そして2001年の「アイ・アム・サム」の知的障害の父を持つ娘役の演技が賞賛を呼び、ハリウッドの天才子役として認められる。
翌年にはスティーブン・スピルバーグが製作総指揮を務めたTVドラマ「TAKEN」(2002)において、物語の鍵となる少女を演じ、さらには全編のナレーションも務めた。「TAKEN」に続いて2005年にはスピルバーグの監督作「宇宙戦争」にトム・クルーズの娘役として出演。「彼女はとても老練なところがある。7、8回も人生経験があるかのよう」とスピルバーグに言わしめた。
彼女の演技への賛辞はスピルバーグだけにとどまらない。「マイ・ボディガード」(2004)で共演した、デンゼル・ワシントンや、「夢駆ける馬ドリーマー」(2005)で共演したカート・ラッセルもインタビューで彼女を絶賛している。
その後「ハイド・アンド・シーク 暗闇のかくれんぼ」(2005)などに出演、キャリアを重ねていく中で、'70年代に彗星の如く現れた伝説のガールズバンドの栄光と衰退を描いた「ランナウェイズ」(2010)に出演。人気の立役者となったボーカルのシェリー・カーリーを演じた。この役でファニングは挑発的な衣装で、天才子役から色っぽさも兼ね備えた女優の姿を見せた。
最新作には、シリーズ2作目から最古参のバンパイア族ボルトゥーリ族のジェーン役で出演している、10代を中心に世界的に支持されている “トワイライト”シリーズの第4作「The Twilight Saga: Breaking Dawn Part1(原題)」が製作進行中。子役からまだまだ成長し続ける彼女のこれからが楽しみだ。

PROFILE
'94年2月23日、米・ジョージア州生まれ。'99年の芸能活動開始と同時に家族はロサンゼルスへ引越す。同じく女優として活躍する妹エル・ファニングとは「となりのトトロ」(2004)の英語吹き替え版で共演。ほかの出演作に「コール」(2002)、「アップタウン・ガールズ」(2003)、「リリィ、はちみつ色の秘密」(2008)がある。また、TVドラマでは「ER 緊急救命室」(2000)、「フレンズ」(2004)などにゲスト出演をしている。

キーファー・サザーランド

“脱ジャック・バウアー”を目指す!? さらなる活躍に注目したい俳優

出演作「フォーン・ブース」(2003)が5日(火)にNHK BSプレミアムで放送。
サザーランドといえばTVドラマ“24-TWENTY FOUR-”シリーズで知られるが、10代から二世俳優として映画に出ていてその数は50作以上に及ぶ。
映画初出演は、父ドナルド・サザーランドと共演したコメディー「ニール・サイモンのキャッシュマン」('83)。端役だったが翌年「キーファー・サザーランドのベイ・ボーイ」でいきなり主演。思春期の悩める少年役でカナダのアカデミー賞といわれるジェニー賞男優部門にノミネート、作品は最優秀作品賞を獲得した。
さらに注目されたのは「スタンド・バイ・ミー」('86)の不良グループのリーダー・エース。くわえたばこで堂に入った風貌は「24―」のジャック・バウアーをほうふつとさせる。当時トム・クルーズ、チャーリー・シーンらと共に、'80年代のハリウッド青春映画をにぎわした若手俳優たちの総称“ブラッドパック”の1人と呼ばれていた。
その後、エミリオ・エステベスらと共演した西部劇「ヤングガン」('88)では恋するガンマンに扮し、サスペンス映画「フラットライナーズ」('90)では、自らを実験台にして死に至る世界をのぞこうとする医学生を。海兵隊で起きた殺人事件を暴く「ア・フュー・グッドメン」('92)では迫力ある中尉を演じ、体をはった演技からインテリ学生まで主役、脇役にとらわれず幅広い役をこなしていた。
作品に恵まれない時期もあったが2001年に「24―」が開始。情熱的だが冷徹で、正義のためなら法も犯す捜査官バウアーは大ブレイク。シリーズは約10年続き、サザーランド=バウアーは揺るぎないものになった。現在は2012年の映画化に向けて準備中だ。一方、最新作は世界の終末を描いたSF映画「メランコリア」(2011年公開予定)。近年は、味わい深い声や表情が名脇役の父に似てきたと言われており、今後の方向性にも注目が集まる。

PROFILE
'66年12月21日、英・ロンドン生まれ。個性派俳優のドナルド・サザーランドと女優シャーリー・ダグラスの間に双子の兄として生まれた。両親の離婚後カナダのトロントへ移住。子役としてテレビや舞台に出演後、'83年に映画デビュー。趣味はギター、乗馬ほか多数。私生活では結婚と離婚が2回。女優ジュリア・ロバーツと挙式直前に破局したことも話題になった。飲酒や暴行にまつわるお騒がせネタも多い。2010年に2回目の来日をした。

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