サム・ライミ

ホラー、ヒューマン、ヒーロー・アクション、ジャンルを問わない実力派マルチ監督
監督作「スパイダーマン3」(2007)が3月19日(金)に日本テレビ系で放送。スーパーマン、バットマンと並ぶアメリカン・コミックのヒーロー、“スパイダーマン”の映画化作品が大ヒットし、いまやメジャー監督となったライミだが、彼のデビュー作は元祖スプラッターともいうべきB級ホラー「死霊のはらわた」('83)で、続編が製作されるほどの大ヒットとなった。このころに一度、大好きだった「スパイダ-マン」の映画化を企画するが実現せず、自身が考えたオリジナル・ヒーロー「ダークマン」('90)を製作し大ヒットさせる。その後、B級コメディーホラーのイメージを覆すべく、大金を手にした人々の欲望を描いたサスペンス「シンプル・プラン」('98)や、ケビン・コスナー主演の野球感動作「ラブ・オブ・ザ・ゲーム」('99)、ケート・ブランシェット主演のサスペンス・スリラー「ギフト」(2000)などを監督し、人間ドラマも演出できることを証明した。
そして2002年、ライミは念願だった「スパイダ-マン」を監督。これまでも映画監督として高い評価を受けていたが、いわゆる大作とは無縁だったライミ。同作の大ヒットは一気に彼をメジャーな存在へと押し上げた。また続編は失敗作が多いという定説を覆すかのように、「スパイダーマン2」(2004)も1作目を超える成功を収める。2007年にはさらなる続編となる「スパイダーマン3」を発表。今や彼は、ハリウッドを代表するヒットメーカーへと飛躍を遂げた。一連の“スパイダーマン”シリーズは、最新のCG技術を駆使した映像の迫力もさることながら、さまざまな葛藤に苦しむ主人公の青春物語に仕上げた点が多くの人の共感を呼び支持された。良い題材に恵まれたという見方もあるが、図書館が開けるほど膨大な量のアニメ・コミックを収集しているという彼のアニ・コミへの思い入れの強さがヒットの裏側にあったことは見逃せない。
2009年には、ライミ自身久々となるホラー「スペル」を手掛ける。兄アイバンとの共同脚本で製作された本作は、パワフルな恐怖を味わいながらも極上の笑いも堪能できる、ホラー出身の監督ならではの会心作になっている。「スパイダーマン」シリーズの続編が望まれていたライミだが、同シリーズの製作からは手を引くようで、彼の次回監督作は、世界中で大人気のオンライン・ゲーム「ワールド・オブ・ウォークラフト」シリーズを映画化したものになりそうだ。

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矢口史靖

娯楽性豊かな作品で万人を楽しませるヒット・メーカー
監督作「ハッピーフライト」(2008)が30日(土)にフジ系で放送。常に意外性あふれる題材を見つけ、ユーモアのセンスが光る良質なエンターテインメント作品を作り続ける矢口監督。幼いころから娯楽映画を好んで見て育ったという彼は、大学在学中に自主制作した8ミリ長編「雨女」('90)でアマチュア監督の登竜門であるぴあフィルムフェスティバルのグランプリを受賞し、「裸足のピクニック」('92)で劇場監督デビューを果たす。ごく普通の女子高生がふとしたことから不幸のどん底に落ちていく様を描いた本作は、ブラック・ユーモアに満ちたストーリー展開で、現在の彼の作風とはかけ離れていたものだった。
その後の作品も、三度の飯よりお金が大好きな娘が巻き起こす大騒動を描いた「ひみつの花園」('97)、やくざの大金を持ち逃げした男女が逃避行に突っ走る「アドレナリンドライブ」('99)といった、奇想天外なストーリーや絶妙なユーモアが持ち味のドタバタコメディーが続く。そんな中、大きな転機となったのが、大衆向けの娯楽作をつくってきた製作プロダクション・アルタミラピクチャーズとの出会いだった。同社のプロデュースで、“男子シンクロナイズドスイミング部”というユニークな題材を映画化した「ウォーターボーイズ」(2001)が大ヒットを記録。シンクロに打ち込む男子高校生たちの奮闘を独特の笑いを散りばめて描くとともに、さわやかな感動を誘う極上のエンターテインメントにまとめ上げ、多くの観客の心をつかんだ。続く「スウィングガールズ」(2004)でも、“東北弁の女子高生”と“ジャズ”というミスマッチな組み合わせからのどかな笑いを生み出し、独特の切り口のおもしろさがうかがえる。本作は前作を上回るヒットを記録し、日本アカデミー賞で最優秀脚本賞など5部門を受賞した。
こうして娯楽映画監督としての地位を確立した矢口監督が、前2作と打って変わって“働く人々”を主人公にした「ハッピーフライト」は、もうひとつのターニングポイント的作品といえる。「ハッピー~」は航空業界を舞台に初めて挑戦した“グランドホテル形式”の群像劇であり、パイロットやCAはもちろん、整備士や管制官、空港上空の鳥を追い払う“バードパトロール”など、航空機の運行に携わるさまざまなプロフェッショナルたちにスポットを当てた“お仕事ムービー”だ。緻密な取材によって彼らのリアルな言動を活写するとともに、人間味のあるユーモアに満ちた展開で万人が楽しめるエンターテインメントにつくり上げた。取材に時間をかけるため寡作と言われるが、1作ごとに“知らない世界の裏側”を見せてきた矢口監督。次回作ではどんな“矢口ワールド”を見せてくれるのか、楽しみにしたい。

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滝田洋二郎

ボーダレスに作品を撮り続けるエンターテインメントのいぶし銀
滝田洋次郎監督作「壬生義士伝」(2002)が6日(水)に衛星第2で放送。遺体を清め棺に納める“納棺師”という職業に就いた男性の奮闘を描いた人間ドラマ「おくりびと」(2008)が、'08年度米国アカデミー賞で日本映画として初となる外国語映画賞を受賞したことで、滝田洋二郎の名前は日本全国に知れ渡った。だが、滝田は「おくりびと」以前にもさまざまなジャンルで快作を世に送り出している、日本を代表するエンターテインメント性に優れた監督なのだ。
滝田は、成人映画の監督として'81年にデビューする。やがて、'85年の世相や芸能人の動向を追う突撃リポーターの姿を通して、人間社会の裏をあぶり出した異色作「コミック雑誌なんかいらない!」('86)で一般映画に進出。その後、大学病院の入院患者たちの姿を描いた「病院へ行こう」('90)などのコメディー作品を中心に話題作を次々と発表する。
その後、コメディーという枠だけに収まらず、人気作家・東野圭吾の同名ベストセラー小説を映画化した「秘密」('99)や、世間に一大ブームを巻き起こした平安時代の陰陽師・安倍晴明の活躍を描いたSFX時代劇「陰陽師」(2001)などラブ・ストーリーやアクションでも才能を発揮する。
「壬生義士伝」は浅田次郎の同名小説を映画化した幕末時代劇で、愛する者のために生き抜いた新選組の一剣士・吉村貫一郎の生涯を描いた感動作だ。中井貴一や佐藤浩市などの豪華キャストを迎えて撮影した本作で、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞する。
「おくりびと」で人間の死という暗くなりがちなテーマをユーモラスに描いた滝田が、その次に取り掛かった作品は「釣りキチ三平」(2009)。前作から一転して、天才釣り少年の幻の魚をめぐる冒険を描いた人気コミックを実写映像化した。
'09年、一躍脚光を浴びたことで、誰もが期待している滝田の次回作が待ち遠しい。

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マーチン・スコセッシ

一貫して自身のルーツを描きつづける現代アメリカの巨匠
監督作「タクシードライバー」('76)が26(土)に衛星第2で放送。ベトナム帰りの孤独なタクシー運転手の常軌を逸した行動を通し、ベトナム戦争後のアメリカの荒廃を切り取った本作や、暴力と犯罪で彩られたニューヨーク草創期の人々の壮絶な生きざまを描いた「ギャング・オブ・ニューヨーク」(2002)など、故郷であるニューヨークを舞台に多くの作品を作り続けているスコセッシ。そんな“ニューヨーク派”監督の彼は、シチリア系イタリア移民の子としてリトルイタリーで生まれ育った。マフィアが支配する犯罪多発地域ながら、幼いころより映画と教会に慣れ親しみ、神父を目指していたこともあるという。彼の作品づくりにはそんな出自が深く影響している。マフィアにあこがれ、その仲間入りを果たした男の半生を通して、イタリア系マフィアの実態を描いた「グッドフェローズ」('90)、ラスベガスを舞台に、カジノ界の裏側をあぶりだした「カジノ」('95)といったギャングの世界を背景にした重厚な犯罪ドラマがそのひとつだ。香港映画“インファナル・アフェア”シリーズをリメークした「ディパーテッド」(2006)は、警察とマフィア、それぞれに潜入したスパイを軸に、両組織の攻防戦を描いた彼ならではの骨太なギャング映画。オリジナル版と基本設定は同様だが、フィルム・ノワール調の映像や名作へのオマージュなど、スコセッシ流の味付けでアイルランド系マフィアの姿に迫り、見事初のアカデミー賞監督賞を獲得した。
一方、こうした血生臭い殺し合いを描くとともに、全く正反対の世界として、イエス・キリストを愛と性に悩む1人の人間として描いた問題作「最後の誘惑」('88)や、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の半生にスポットを当てた「クンドゥン」('97)といった神や宗教、祈りをテーマにした秀作も生み出している。後者にいたっては、“私の監督作品の中で唯一本当に愛することができる作品”と述べるほど、そのこだわりの強さがうかがえる。
現在は芥川賞作家・遠藤周作の小説「沈黙」を映画化した作品を準備中。鎖国時代の長崎でキリスト教の布教に努めたポルトガル人宣教師の苦悩を描くスコセッシ監督10年来の企画だ。自身のアイデンティティーにこだわり、そのこだわりを強く作品に焼き付けてきた彼が日本の名作をどのように料理するのか期待が高まる。間もなく見られるスコセッシ監督の最新作は「シャッター アイランド」(2010年4月公開)。ある女性患者の失踪事件を調査するため、絶海の孤島に建つ犯罪者用精神病院を訪れた連邦保安官がさまざまな謎に直面する本格ミステリーで、主演のレオナルド・ディカプリオと4度目のタッグを組んだ。

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ジョン・ラセター

CGアニメーションを芸術作品へと導いた立役者
監督作「カーズ」(2006)が12月4日(金)に日本テレビ系で放送。監督でありアニメーターのラセターは、独創的な物語と技術的なアイデアを常に模索し、数々の素晴らしいCGアニメーションを生み出してきた。高校1年生の時に漫画とアニメーションに夢中になった彼は、カリフォルニア芸術大学(カルアーツ)でキャラクター・アニメーション・プログラムを学ぶ。卒業後、ディズニーのアニメーション映画部門を経て、ルーカス・フィルムのCGチームに参加。そこで、CG技術がアニメーションの作業形態を変えていく可能性を見いだしたラセターは、'86年、ピクサー・アニメーション・スタジオの創立者メンバーとなる。CGアニメーションの開拓者として制作にまい進する彼は、今やピクサーのロゴマークとなった電気スタンドのストーリーを描く短編「ルクソー」('86)を手がける。続く、赤ちゃん相手に奮闘するブリキのおもちゃを描く短編「ティン・トイ」('88)では、CGアニメーション初のアカデミー賞短編アニメ賞を受賞した。わずか5分ほどの時間の中で、CGが得意とする物を主人公に、愛すべきキャラクターを見事に作り上げている。'95年に、古巣のディズニーと提携して、オモチャの世界で繰り広げられる冒険と友情を描く世界初の長編フル3DCGアニメーション「トイ・ストーリー」の監督を務め、アカデミー特別賞を受賞。作品のクオリティーの高さと興行的成功で、ピクサーの名を一躍世界に知らしめる。さらに、働きアリが冷酷なバッタを倒すために立ち上がる「バグズ・ライフ」('98)、オモチャコレクターに誘拐された人形を救うべくオモチャの仲間たちが大冒険を繰り広げるヒット作の続編「トイ・ストーリー2」('99)を監督。いずれの作品も大ヒットを記録した。
その後、ピクサーのクリエイティブ部門の責任者としてスタジオを率いるラセターが、6年ぶりに監督したのが「カーズ」だ。クルマの世界を舞台に、思い上がった若きレーサー・マックイーンが、迷いこんだ田舎町で優しい住民たちと出会い、自分の人生を見詰めなおす姿を描く。本作のストーリーは、仕事に追われるラセターが、モーターホームで2カ月間のアメリカ横断家族旅行に出た際に感じた“家族や友人の大切さ”を作品で伝えたいという思いから考案された。以降、シェフを夢見るネズミ描く「レミーのおいしいレストラン」(2007)をはじめ、数々の名作で制作総指揮を担当。進化するCG技術とともに、ラセターが最も大切とするキャラクターとストーリーがあらゆる世代の人々を引きつけ、ピクサー製アニメーションの魅力を築いていく。
最新作としては、制作総指揮を務めた「カールじいさんの空飛ぶ家」が12月5日(土)に公開される。最愛の妻を失い1人になってしまったカールじいさんが、人生最初で最後の大冒険に繰り出す姿を描く感動のファンタジーだ。さらに、おなじみのオモチャたちが活躍する「トイ・ストーリー3」が2010年にアメリカで公開予定と快進撃は続く。次はどんな驚きに満ちた世界へ連れて行ってくれるのか楽しみにしたい。

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西川美和

人間の心の裏を鋭く映し出す若き“本格派”
西川美和監督作「ゆれる」(2006)が17日(木)に衛星第2で放送。
長編監督2作目ながら、本作で国内の映画賞を総なめにし、海外でも高い評価を集めた西川。オリジナル脚本にこだわり続け、深い心理描写と物語の力で秀逸な人間ドラマを生み出している。女性監督の台頭が著しい昨今、その旗手ともいうべき実力派だ。
そんな彼女の才気は、鋭い人間洞察に見受けられる。物事を多面的な視点から観察し、善と悪、ウソと本当、そんなものでは一概に割り切れない“玉虫色”な人間の感情をえぐり出す。放蕩息子の帰還を機に一組の家族が崩壊していく情景を描いたデビュー作「蛇イチゴ」(2002)は、ウソの心地よさや真実ゆえの心苦しさといった複雑な感情に陥る登場人物たちをシニカルな目線で見つめ、最後に善と悪の逆転劇を描いた。
「ゆれる」は、兄弟の愛憎を痛々しいまでに描ききった力作だ。幼なじみの女性の死をきっかけに、“いい人”の仮面を破ってそれまで見せなかった一面を明らかにしていく兄と、そんな兄に対して疑惑を広げていく弟。対照的な両者の心の“ゆれ”をきめ細かく描写し、善と悪とを併せ持つ人間のドロドロとした闇を暴いた。
そして、先ごろ公開された新作が、“ニセモノとは何か”をテーマに選んだ「ディア・ドクター」(2009)だ。免許を持たないニセ医者でありながら、村人から神のように慕われている男を主人公に据えた本作。彼がついた善意の“ウソ”を通して、見捨てられる辺境の地では何が正義で何が悪なのか、という深遠なテーマを投げかける。僻地医療や高齢者医療の問題を浮き彫りにするとともに、弱さ、優しさ、善意、ずるさが同居する人間の不可解な心理を描いてみせた。
作品ごとに評価を高め、独特の世界観に引かれた熱狂的なファンを持つ西川は、今最も新作が期待される監督のひとりである。これからも彼女ならではの視点で、さまざまな人間の“業”を描いていってほしい。

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ベン・スティラー

監督、製作、脚本もこなす売れっ子コメディー俳優
主演作「ナイト ミュージアム」(2006)が8月7日(金)日本テレビ系で放送。
俳優だけでなく、監督、脚本などマルチな才能を発揮しているスティラー。コメディー俳優の両親の影響でショービジネスの道を志した彼は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で舞台芸術を学んだ後、ブロードウェーで舞台に立つ。その後も俳優業のかたわら、パロディー映画を撮ったり、人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」の出演者兼ライターをするなどショービジネスの多方面で活躍する。
彼の映画デビューは日本軍捕虜の役を演じた「太陽の帝国」('87)。そして、もともと製作者になりたかったという彼は、「リアリティ・バイツ」('94)で念願の監督業にも進出した。この作品は、Xジェネレーション世代の現実を描いたものとして高評価を受け、スティラー自身も一時“Xジェネレーションの旗手”と言われたが、その後は、俳優、監督の両方ともコメディーに軸足を置いた活動を行っている。
そんな彼がブレークしたのは、キャメロン・ディアス演ずる高校時代の同級生メリーを13年間も思い続ける青年にふんした「メリーに首ったけ」('98)。ついていない情けない男をラブリーに演じ強烈な印象を残した。そして、ロバート・デ・ニーロと共演した「ミート・ザ・ペアレンツ」(2000)で演技の実力が認められ、それ以降のスティラーは着実に実績を積み重ねていく。超売れっ子のスーパーモデルを熱演した「ズーランダー」(2001)、天才一家の長男で元天才不動産投資家にふんした「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」(2001)、脇役であり悪役でありながら、すっかり主役を食ってしまった潔いほどの汚れぶりを発揮した「ドッジボール」(2004)など突飛なキャラクターの演技が光る。
そんな彼の抜群のコメディーセンスは、監督としても発揮され、コメディーを中心に既に5本の映画を演出している。昨年公開された「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」は、彼が「太陽の帝国」出演時にひらめいた20年来の企画を実現させたもの。戦争映画のため何も知らされず本物の戦場に送りこまれてしまった俳優たちの奮闘を笑いでつづったコメディーで、落ち目のアクションスターを演じた彼は、監督、製作、脚本もこなした。こうして今ではアメリカを代表するコメディー俳優の1人になった彼は、これからも日本にお笑い旋風を巻き起こしてくれるだろう。
次回主演作である「ナイト ミュージアム2」は8月13日(木)より公開。博物館を舞台に描くファンタスティック・コメディーの続編で、今回の舞台はワシントンD.C.に実在する世界最大のスミソニアン博物館。彼は前作同様、動き出す展示物を相手に奮闘する警備員ラリーにふんしている。

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本広克行

新たな一歩を踏み出したヒット・メーカー
本広克行監督作「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(2003)が18日(土)にフジ系で放送。
本作で「南極物語」('83)を抜いて日本の実写映画の歴代興行収入第1位に輝く快挙を成し遂げた本広監督。より多くの観客を楽しませるためのエンターテイナーに徹した映画製作を心掛けているという彼は、ドラマディレクターとしてTVドラマ版「踊る大捜査線」など、数多くのドラマを手掛けてきたことからキャリアを積んでいき、96年に「7月7日、晴れ」で映画監督デビュー。そして「踊る大捜査線 THE MOVIE」('98)のヒットを機に、彼は演出家・監督としてのさらなる可能性を模索しはじめる。
「踊る―」シリーズのスピンオフ第1作「交渉人 真下正義」(2005)では、ハリウッド映画さながらの演出でユースケ・サンタマリアふんする警視庁初の“交渉人”と地下鉄テロ犯との心理戦をスピーディーに表現。関西を中心に活動する劇団ヨーロッパ企画のヒット舞台劇を映画化した「サマータイムマシン・ブルース」(2005)では、クーラーのリモコンをめぐって現在と昨日を行き来する学生たちの騒動を軽快なテンポで描き、讃岐うどんを題材にした「UDON」(2006)では、本広監督作品ではお馴染みとなったユースケ・サンタマリアを主演に、随所に面白さを散りばめた娯楽映画を作り上げた。
近年ではカンフー・アクションとコメディーを組み合わせた柴咲コウ主演の「少林少女」(2008)でメガホンを取り興行収入15億円のヒットを記録した。11月21日(土)には最新監督作「曲がれ!スプーン」が公開。長澤まさみと初のタッグを組む本作では、どんなこだわりと映像表現で観客を楽しませてくれるのか期待が集まる。

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マックG

大作で新しい伝説を作り、今後の期待度No.1監督
監督作「チャーリーズ・エンジェル フルスロットル」(2003)が6月28日(日)にテレビ朝日系で放送。
衣料販売店Gapとコカ・コーラのコマーシャルの監督としてキャリアをスタートさせたマックGは、サブライムやワイクリフ・ジーンといった多種多様なアーティストたちのミュージックビデオも50本以上監督してきており、業界で高く評価された。そんな彼の映画監督デビュー作は、ドリュー・バリモア、キャメロン・ディアス、ルーシー・リュー主演の「チャーリーズ・エンジェル」(2000)。本作は、姿を見せないボス、チャーリーの探偵事務所に所属する美女3人組の探偵の活躍を描いた痛快アクション。スピーディーな展開ゆえ、そこにはアクション、ギャグ、サスペンス、恋愛ドラマなど様々な要素がぎっしりと詰め込まれて、エネルギッシュで遊び心いっぱいの演出が見る者を引きつける。そして、主演3人のコミカルでキュートな魅力をうまく引き出している。
この作品は、公開週末ナンバー1に輝いただけでなく、新人監督としては最高記録となる、米国内4千万ドルの興行収益を上げた。その後、世界31カ国で公開週ナンバー1となり、2億6千万ドルの世界興行収益を記録する。デミ・ムーアが加わり、3人に負けずとも劣らないパワフルな美しさを披露した続編「チャーリーズ・エンジェル フルスロットル」では、さらに演出が大胆になり、作品の魅力が増した。
また実話に基づいた「マシュー・マコノヒー マーシャルの奇跡」(2006、日本未公開)は、飛行機事故で選手の大半を亡くした大学アメリカンフットボールチームを再生させるために奔走する1人の若きコーチとチームの奮闘を描いたスポーツ・ドラマ。マックGは映画をあまり撮っていない経験不足から心情の描写や物語の組み方が不得手のように言われるが、ミュージックビデオ出身なだけに映像やシーン個々の描き方、音楽の使い方では抜群の手腕を発揮する。それは、まさに映像でストーリーを語っているような印象を受ける。「マシュー・マコノヒー マーシャルの奇跡」では、特にフットボールシーンが秀逸。
現在公開中の「ターミネーター4」(2009)は、巨匠ジェームズ・キャメロン監督が創造し、アーノルド・シュワルツェネッガーの出世作となったSFアクションシリーズの最新作。ゴージャスでカラフルな映像で描く痛快アクションを得意とするマックGが、本作では徹底してリアルな映像とそのスピード感、音響の臨場感、ダークな演出にこだわった点が注目されている。
次回作としては、ジュール・ヴェルヌによるSFアドベンチャーの名作を映画化した『海底2万マイル』のリメークを手掛けることになっている。また、トニー賞に輝いたミュージカル「Spring Awakening」の映画化の企画開発にも入っているという。

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ロン・ハワード

手堅い演出でコンスタントにヒット作を生み出すオスカー監督
ロン・ハワード監督監督作「ダ・ヴィンチ・コード」(2006)が16日(土)にフジ系で放送。
青春映画の名作「アメリカン・グラフィティ」('73)などで人気を博した俳優業から映画監督に転身し、その確かな演出力で見事成功を手にしたハワード。ミステリー、アクション、SF等、どんなジャンルを手掛けても良質な映画に仕上げる彼だが、多くの作品に共通しているテーマが“家族”だ。アメリカの中流家庭の在り方をコミカルなタッチで描いた「バックマン家の人々」('89)はもちろん、大迫力の火災シーンが話題を呼んだスペクタクル・ドラマ「バックドラフト」('91)でも、作品の根底にあったのは、殉職した消防士の父の跡を継いだ兄弟の確執と和解だった。
また、トム・クルーズ、ニコール・キッドマン共演の「遙かなる大地へ」('92)では、アイルランドからアメリカへ移住して家族を作ろうとする恋人たちを描き、ラッセル・クロウ主演の「シンデレラマン」(2005)では、大恐慌時代に家族を養うため戦い続けた実在のボクサーの半生を映画化した。このように、現代では失われつつある家族のきずなを丹念に描くことから“ハリウッドの古き良き伝統を受け継ぐ監督”と評されることも多く、本国でコンスタントにヒット作を生み出していることも少なからずその作風と関係していよう。
さらに、「シンデレラマン」のような実話を基にした作品で抜群の手腕を発揮するのもハワードの特徴だ。月への飛行中に爆発事故を起こした、アポロ13号の危機と奇跡の生還をリアルに再現した大作「アポロ13」('95)は大ヒットを記録。実在の天才数学者ジョン・ナッシュの数奇な運命をつづった「ビューティフル・マインド」(2001)では、持ち前のヒューマニズムあふれる演出が感動を呼び、作品賞、監督賞ほか4部門でアカデミー賞を受賞した。
現在公開中の「フロスト×ニクソン」(2008)では、英国の人気司会者デビッド・フロストがリチャード・ニクソン元米大統領に行った、伝説のTVインタビューとその舞台裏をスリリングに映画化。タブロイド紙記者たちの激動の1日をつづった「ザ・ペーパー」('94)や、TVの持つ恐ろしさをコミカルに描いた「エドtv」('99)などでマスメディアに強い関心を示したハワードの集大成ともいえる1作で、今年のアカデミー賞では作品賞、監督賞など5部門にノミネートされた。

「天使と悪魔」最新作「天使と悪魔」が5月15日(金)より公開。「ダ・ヴィンチ・コード」の前章にあたる歴史ミステリーで、バチカンを狙ったテロを阻止するため、ガリレオ・ガリレイらが結成した秘密結社の謎に迫る宗教象徴学者ラングドン(トム・ハンクス)の活躍を描く。

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スティーブン・ソダーバーグ

娯楽性と芸術性を兼ね備えた作品をつくり続ける実力派監督
スティーブン・ソダーバーグ監督作「オーシャンズ12」(2004)が28日(火)に衛星第2で放送。
どんなにシリアスなテーマを扱っても、観客を楽しませるエンターテインメント性を外さない作品づくりで、ハリウッドの第一線で活躍するソダーバーグ。「セックスと嘘とビデオテープ」('89)でカンヌ国際映画祭パルムドールとサンダンス映画祭観客賞を受賞したデビュー当時は、“インディペンデント映画の俊英”として注目されていた。だがその後製作した作品は批評家の評価を得るも、どれも商業的には大失敗。卓越したセンスを持ちながらも、複雑で説明的映像を用いない彼の作風は、なかなか観客に受け入れられなかった。だが、監督7作目「アウト・オブ・サイト」('98)を初めて一本の娯楽作品としてまとめあげることに成功した彼は、ジュリア・ロバーツを主演に迎え、史上最大級の集団訴訟に勝利した女性の活躍を描いた「エリン・ブロコビッチ」(2000)でようやく商業的成功を収める。本作では、ときにドキュメント風な映像を織り交ぜつつ、リアルで厚みを持った人物描写でロバーツの個性を生かした魅力的なヒロイン像を作り出し、社会派作品にありがちな重苦しい雰囲気とは無縁な一級のエンターテインメント作品に仕上げた。
続く「トラフィック」(2000)では、“麻薬汚染”をテーマにした群像劇に挑戦。メキシコ、サンディエゴ、オハイオという3つの場所で繰り広げられるストーリーを同時進行させながら、緻密な構成によって登場人物たちを巧みに結び付け、麻薬コネクションと取り締まる側の攻防をリアルに描いた。また、3つのストーリーを三色別々の色調で描き分けることで複雑な物語を観客に分かりやすく見せるとともに、娯楽味を持たせた演出でエンターテインメントとしても確立させた。
2000年に公開されたこの2作品は、ともにアカデミー賞監督賞にノミネート。後者で初のオスカーを獲得した彼は、一気にメジャー監督へ登り詰めた。“同じような作品ばかり作っていたら枠にはめられたみたいでつまらない”という彼は、その後も娯楽的な内容に徹して作った“オーシャンズ”シリーズをヒットさせる一方で、ロシアの巨匠アンドレイ・タルコフスキーが手掛けた異色SF映画「惑星ソラリス」('72)をリメークした「ソラリス」(2002)や、「カサブランカ」('42)「第3の男」('49)など'40年代のフィルム・ノワールへのオマージュとして、全編モノクロ・フィルムの映像にこだわった「さらば、ベルリン」(2006)など実験的作品への挑戦も続けている。ことし公開された、キューバの英雄・チェ・ゲバラの半生を描いた2部作「チェ 28歳の革命」「チェ 39歳別れの手紙」(2008)では、2作のスクリーンサイズや撮影方法を変えるといった技法的冒険に挑戦し、同じ人物を描きながらも、毛色の違う作品を生み出した。
新作としては、マット・デーモン主演で、'90年代に実際に起こった農産物加工業社の価格操作事件を描く「The Informant(原題)」がことし10月9日全米公開。そのほか、ブラッド・ピット主演の野球映画、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ主演のミュージカル映画なども準備中。作る映画の種類もどんどんバラエティーに富んできているのも面白い。これからもハリウッドの常識を覆しつつ、さまざまな作品で私たちを楽しませてくれるだろう。

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マイケル・ベイ

抜群の映像センスで観客を魅了するヒットメーカー
マイケル・ベイ監督作「ザ・ロック」('96)が22日(日)にテレビ朝日系で放送。
20代ですでに、ティナ・ターナーやライオネル・リッチーら大物歌手のミュージック・クリップや、大手企業のCMを手掛け映像世界で注目を集めていたベイ。彼の斬新で見る者を引き付けるセンスにいち早く目を付け映画監督に抜擢したのが、当時から名プロデューサーとして活躍していたジェリー・ブラッカイマーだった。黒人刑事コンビの活躍を描くポリス・アクション「バッドボーイズ」('95)で映画監督デビューしたベイは、ブラッカイマーが見抜いた通りの手腕を発揮。インパクトの強い豪快なアクションとユーモアを交えたテンポよい演出で見事なエンターテインメント作品に仕上げ、当時まだ新人だったウィル・スミスを一躍スターにするほどヒットを飛ばした。華々しいデビューを飾ったその翌年には再びブラッカイマーと組み、ショーン・コネリーとニコラス・ケイジ主演のアクション大作「ザ・ロック」も成功させる。
2人の快進撃はさらに続き、世界中で大きな話題を呼んだ感動作「アルマゲドン」('98)「パール・ハーバー」(2001)を製作。「アルマゲドン」の地球に降り注ぐ隕石による街の崩壊やスペースシャトルの打ち上げ、「パール・ハーバー」の40分にもおよぶ激しい爆撃シーンなどを、カメラワークやVFXを駆使して描いたスペクタクルなアクションに、恋、友情、家族愛などの人間ドラマを巧みに織り交ぜ多くの観客の心を掴んだ。

「トランスフォーマー」この2作でヒットメーカーの地位を確立したベイは、初めてブラッカイマーの元を離れ、ドリームワークス製作のSF娯楽大作「アイランド」(2005)を監督。だが、結果は興行的にはあまり振るわなかった。それでも、同製作会社の代表の1人であるスティーブン・スピルバーグがベイのアクションと高揚感を作り出す才能を高く買い、自身が製作を進めるSFアクション「トランスフォーマー」(2007)の監督に推した。さまざまな機器に“トランスフォーム(変形)”する金属生命体同士の人類を巻き込んだ戦いをこれまでにない迫力で描いたベイは本作で名誉を挽回し、今夏には続編「トランスフォーマー/リベンジ」も公開する。再び地球を襲う金属生命体に、前作から続投するシャイア・ラブーフ演じる主人公が挑む。

※画像は前作「トランスフォーマー」より
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ジョン・ウー

独自のアクション演出と血の通った人物造形が持ち味のヒットメーカー
ジョン・ウー監督作「M:I-2」(2000)が19日(日)にテレビ朝日系で放送。
独自の美学に貫かれたアクション演出で世界中の映画ファンを魅了するウー。デビュー作が不運に見舞われ、長らく低迷していたウーにとって転機となったのが“香港のスピルバーグ”とうたわれたツイ・ハークとの出会いだった。ハークが製作を手掛けた「男たちの挽歌」('86)で監督・脚本を担当。暗黒街の男たちの抗争と友情をスタイリッシュな映像で描いた同作は、カンフー・アクションが主流だった香港映画界に新風を巻き込み、世界中で話題を呼んだ。以後、続編「男たちの挽歌II」('87)や、男2人と美女1人の怪盗トリオが奇抜なテクニックを駆使して活躍する「狼たちの絆」('91)などヒット作を連発。両手に銃を持った男たちのダンサブルな動き、カット割りの連続からのスローモーションといったアクション演出は、クエンティン・タランティーノら多くの監督に影響を与えた。
香港を代表するヒットメーカーにまで上り詰めたウーだったが、「香港映画の製作の現状は過酷だし、扱えるテーマも限られている」という理由からアメリカに活動の拠点を移す。「ハード・ターゲット」('93)と「ブロークン・アロー」('96)の2本の娯楽アクションでハリウッドでの足場を固めた彼は、「フェイス/オフ」('97)でいよいよ本領を発揮。互いの顔が入れ替わったFBI捜査官と凶悪テロリストの死闘を描いたこの作品では、たぐいまれなアクション演出に単純な善悪では割り切れない深みのあるドラマが加わり、批評家からも高い評価を得る。さらに、同作の大ヒットでハリウッド屈指の人気監督となったウーは、製作・主演のトム・クルーズによって超大作「M:I-2」の監督に抜てきされ、クライマックスでのバイクを駆った一騎討ちのシーンなど随所で持ち味を発揮した。
その妥協のない描写から“バイオレンスの詩人”とも呼ばれるウーだが、本人は暴力否定論者であることを公言。暴力を描くのはそのひどさを伝えるためであり、自作にしばしば登場する白いハトには“平和”の意味が込められていると言う。白人兵士と先住民族の兵士の友情を描いた「ウインドトーカーズ」(2001)や、子どもたちの過酷な現実をつづるオムニバス映画「それでも生きる子供たちへ」(2005)の1編「桑桑<ソンソン>と小猫<シャオマオ>」では、そうしたウーのヒューマニズムを垣間見ることができよう。以前の作品とは毛色の異なるこの2作をへて、今後どのような映画を作るのか注目される。

「レッドクリフ PartI」中国の英雄伝「三国志」のハイライトである“赤壁の戦い”を映画化した「レッドクリフ PartI」が11月1日(土)より公開。ウーが多額の私財をつぎ込んで完成させた入魂の1作だ。

(C)2008 Three Kingdoms Ltd.(C)Bai Xiaoyan

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クリストファー・ノーラン

斬新なアイデアで観客を驚かせる敏腕監督
監督作「バットマン ビギンズ」(2005)が8日(金)にフジテレビ系で放送。
10年前まで、ごく普通の会社員だったノーランは、会社の休日を使って1年がかりで撮り上げた初の長編作「フォロウィング」('98)を経て、長編2作目「メメント」(2000)でアカデミー賞脚本賞にノミネートされるという才能の持ち主。「メメント」は、妻を亡くしたショックから記憶障害になってしまった男性に真実と虚構が交錯するというサスペンス・スリラーで、現在から過去へストーリーが逆行していく中で謎が明らかになっていくという複雑な構成が絶賛された。ノーランは映画製作について「観客を驚かせたい。何度も繰り返し観てもらえるような作品をつくりたい」と語っており、彼の思惑通り、難解にも関わらずリピーターになる観客が続出するほど大ヒットした。
そんな彼の才能にいち早く目を付けたのが“オーシャンズ”シリーズを手掛けるスティーブン・ソダーバーグ。彼の後ろ盾の下、ノーランはノルウェー映画(日本未公開)のリメーク作「インソムニア」(2002)でメジャー映画に進出。事件の捜査中、誤って相棒を殺してしまって以来不眠症になった敏腕刑事が、事件の容疑者に追い詰められていくというオリジナルのストーリーに、ノーランは主人公が相棒を殺してしまう原因となる過去の秘密を盛り込み主人公に人間的深みを加えた。ただのリメークに終わらない作品に仕上げたノーランの才能は、主演を務めた名優アル・パチーノからも認められるほど。波に乗った彼は4作目にして人気シリーズ“バットマン”の監督に抜擢。それまでティム・バートンらが手掛け、ヒーローものの娯楽作としてヒットさせてきたシリーズだけに続編に期待が集まった。だがやはりノーランはその過去のヒットに甘んじることなく、独自の視点でバットマンに挑んだ。ごく普通の青年がなぜバットマンになったかという過去や心の機微を丹念に描き、ヒーローであるバットマンを人間味のあるキャラクターにつくり変えた。
全く新しい“バットマン”シリーズは観客にも受け入れられ、シリーズ最新作「ダークナイト」(2008)が9日(土)から公開。強大な敵“ジョーカー”とバットマンが死闘を繰り広げる。今度はどんなアイデアで驚かせてくれるのか期待大だ。

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市川崑

日本映画界の巨星・市川崑
総監督を務めた「東京オリンピック」('65)が21日(月)NHK衛星第2で放送。昭和から21世紀初頭まで、映画界を牽引してきた、言わずと知れた日本を代表する監督である。
「映画にならない題材はない」と言う通り、思いついたら失敗を恐れず挑戦していく貪欲さから彼の作品には、“文芸作品”“時代劇”“アニメーション”“ドキュメンタリー”“ミステリー”など多くの分野が含まれている。また、思いつくままに自己表現していく市川の旺盛な好奇心は、「結婚行進曲」('51)での早口台詞や、子育ての奮戦を赤ちゃん視点から描いた「私は二歳」('62)、「火の鳥」('78)でのアニメーションと実写の合成、「竹取物語」('87)での昔話とSFの融合など、いくつかの作品からも見ることが出来る。そして、彼の代表作のひとつ「ビルマの竪琴」('56、'85)はベネチア国際映画祭サン・ジョルジュ賞、アカデミー賞外国語映画賞ノミネート(ともに'56年版)など外国でも高い評価を受けた。
また、オリンピックを“筋書きのない壮大なドラマ”と捉えた市川は、開会式から閉会式に至るまでを記録映画として撮った「東京オリンピック」の総監督を務める。望遠レンズを使用したり、さまざまなアングルから撮影するなど、選手の人間性を重視した演出をほどこし、芸術性の高い作品へ仕上げた。その一方で、記録映画なのか、芸術かの一大論争を巻き起こすが、結果的には大ヒットを記録することになる。その後も“金田一耕助”シリーズでヒットを連発し名匠の名を欲しいままにしていった。
晩年も創作意欲は尽きることなく、2006年には自らの「犬神家の一族」('76)を30年ぶりにセルフリメーク。夏目漱石の短編オムニバスの「ユメ十夜」(2007)の第一編「第二夜」が遺作となった。
後進の映画監督への影響も大きく、“岩井美学”なる映像手法を確立した岩井俊二は「犬神家の一族」を「自分の映画づくりの教科書」と呼び、2006年に「市川崑物語」を製作している。また、公開中の「ザ・マジック・アワー」では、市川監督が監督役として登場し、隅々に市川作品へのオマージュが散りばめられており、エンドクレジットには“市川崑監督の思い出にささぐ”と三谷幸喜監督のメッセージが入っている。

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ラリー&アンディ・ウォシャウスキー

互いに相手を補い合い、常に新しいものに挑みつづける兄弟
脚本・監督作「マトリックス レボリューションズ」(2003)が27日(金)に日本テレビ系で放送。“マトリックス”シリーズの監督といえば、もはや説明の必要がないほど有名になったウォシャウスキー兄弟。映画好きな両親を持った2人は毎週のように映画館に通い、映画の中で育ってきた。ゆえに監督になるのは、自然なことだったと言う。大学を中退し、建築工事の仕事に携わり、マーベルコミックの脚本を手掛けるなどした後、'95年の「暗殺者」の脚本家として映画界入りを果たす。シルベスター・スタローンとアントニオ・バンデラス出演の本作は、脚本の巧妙さをたたえられながらも、ヒットはしなかった。そして監督としてのデビューはレズビアンサスペンスの「バウンド」('96)。バイオレンスとセックスにまみれた女たちの生き様を描き上げた本作で、批評家たちの絶賛を受け、きわどくエネルギッシュな個性を持つウォシャウスキー兄弟の才能が世間に注目され始める。そして5年の月日をかけて脚本を書き上げた、「マトリックス」('99)を発表。新感覚のSFXで彩られた本作は、映像世界に革命をもたらし、スタイリッシュなアクション、斬新かつ奥深い世界観で全世界に衝撃を与えた。大ヒットを記録し、全3作のシリーズ化も決定し、彼らは一躍人気監督の仲間入りを果たす。型破りなことを好み、常に限界に挑戦しているウォシャウスキー兄弟。これまでずっと共に作品を作り上げてきた2人は、互いに相手を補い、相互に影響を与え合っているという。“マトリックス”シリーズ終了後は監督ではなく、脚本家として「Vフォー・ヴェンデッタ」(2005)に参加。久々の監督作として、2人が初めて日本のアニメを知ったきっかけとなった作品「マッハGoGoGo」の映画化、「スピード・レーサー」(7/5[土])が公開される。ファミリー映画を作りたいと願ってきた彼らが、本作で家族の強い絆を描きつつ、最新の映像世界を見せてくれる。

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フランク・ダラボン

スティーブン・キング原作作品の名手
監督作「グリーンマイル」('99)が10日(土)にフジ系で放送。現在、劇場公開されている監督作は3作品(新作を含まず)と少ないながら、デビュー作「ショーシャンクの空に」('94)をはじめ「グリーンマイル」「マジェスティック」(2001)と、すべてヒットさせているダラボン。中でも、無実の罪で投獄された男が、みずからの力と知恵で、自由を手に入れようとする姿を描いた「ショーシャンクの空に」と、奇跡を起こす黒人死刑囚と看守たちとの心の交流を描いた「グリーンマイル」は、各年のアカデミー賞で、作品賞をはじめ、それぞれ7部門と4部門にノミネートされた。1、2作目ともに作品賞にノミネートされたことは、映画史上6人だけという快挙だ。そして、そのどちらも原作は、彼が大ファンだという人気作家スティーブン・キングの小説で、ダラボン自身が脚色。ホラー小説家として広く知られるキングだが、ダラボンは、ヒューマニズムを色濃く描いた彼の“非ホラー小説”に引かれるという。キング小説の魅力を、“色々なタイプの人間が巧みに描写されている”ところだと話すダラボンは、それを映画の中で十分に活かすため、登場人物を丁寧に描写することを何よりも大切にしている。映像効果や奇抜なストーリー展開に頼る作り方をしていない「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」は、どちらも刑務所というネガティブで暗い印象になりがちな場所が舞台でありながら、人間同士の心の触れ合いをじっくりと観せていき、ラストには観る者に希望や勇気を与え、また人の温かさを伝えて深く感動させた。原作の魅力を崩すことなく映画化するダラボンの手腕はキングにも信頼されているほどで、再びキング小説を原作にした新作「ミスト」(2007)では、ストーリーのラストを原作と変えたにも関わらず、キングに、“もし私がこのラストを思いついていたら、小説の中で使っていただろうね”と言わしめたほどだ。5月10日(土)公開の新作「ミスト」は、不審な深い霧にのみ込まれた田舎町のスーパーマーケットを舞台に、店内に取り残された人々が霧の中から現れる得体の知れない凶暴な生物たちに襲われ、次第に理性を失っていく姿を描く。キング×ダラボンの新たな世界が楽しみだ。

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スティーブン・スピルバーグ

ハリウッドのトップに君臨し続ける世界最高峰のヒットメーカー
監督作「オールウェイズ」('89)が3日(土)に衛星第2で放送。愛きょうのある笑顔と眼鏡がトレードマークの、世界的映画監督スピルバーグ。'60年代後半に映画界入りした彼は、「JAWS ジョーズ」('75)、「E.T.」('82)、“インディ・ジョーンズ”シリーズ、“ジュラシック・パーク”シリーズ、「宇宙戦争」(2005)など、数々の大ヒット作を次々と世に送りだし、“娯楽映画の王様”の称号を約20年も前から欲しいままにしている。その一方で、評論家受けがあまり良くないことでも知られ、“演出技術は抜群だがテーマは子どもっぽい”という評価を少なからず受けてきた。しかし、映画人として類いまれな才能を持つ彼は、人間のネガティブな一面をテーマにした「シンドラーのリスト」('93)、「アミスタッド」('97)、「プライベート・ライアン」('98)、「A.I.」(2001)など、シリアスな作品でも成功できることを証明し、一部評論家の意見を一掃させた。そうしたジャンルを問わずに映画を作れる手腕とともに、特筆すべきことが作品のリリースの早さである。映画監督のほかに製作や製作総指揮を数多くの作品で手掛け、一時は自身の製作会社を設立するなど売れっ子ゆえの超多忙なスケジュールに追われる中でも、彼はほぼ1年に1作のペースで監督作をリリースし、そうした行動力が他の追随を許さない彼の今ある地位を支えている重要なファクターのひとつといっても過言ではないだろう。新作は、'80年代に一世を風びしたアドベンチャー・シリーズの第4作「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」が6月21日(土)に公開。前作から19年を経て再びスクリーンに戻ってくるインディの活躍、そのインディを演じるハリソン・フォードが60歳半ばを超えて挑戦するアクションなどの見どころに加え、シリーズ全作でタッグを組むスピルバーグ監督と製作総指揮のジョージ・ルーカスの演出にも期待と注目が集まる。

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デビッド・フィンチャー

鮮烈な映像センスで社会の闇を浮き彫りにしていくヒットメーカー
監督作「パニック・ルーム」(2002)が27日(日)にテレビ朝日系で放送。フィンチャーの映画監督デビュー作は「エイリアン3」('92)。人気シリーズの大作に27歳の若者が大抜擢されるという前例はなく、大きな話題を呼んだ。だが、彼の名が世界に知れ渡り、その才能を広く認知されたのは「セブン」('95)だろう。本作はフィンチャーのみならず、ブラッド・ピットというスターを生み出した作品でもある。大食、強欲、怠惰…といったキリスト教の7つの大罪に基づく連続殺人を追う2人の刑事の姿を、スタイリッシュかつダークな映像でとらえ、全編にわたる暗い映像の中に独特の世界観を作り出しながら、正義について語りかけた。鮮烈な映像と意外なストーリー展開がさらに注目されることとなる「ファイト・クラブ」('99)では、再びブラッド・ピットを起用し、彼のワイルドでダーティーな魅力を開花させる。この作品でフィンチャーは、持ち味である鋭角的な映像を散りばめ、現代社会で去勢されてしまった男たちの怒りや痛みを浮き彫りにし、暴力の中に人の本質を見いだすことで人間の二面性をえぐり出した。社会の闇を描き、思いもよらない結末で観客を圧倒してきたフィンチャーは2002年、すべての出来事が一軒家で起こるというストレートなサスペンス「パニック・ルーム」に挑戦する。意表をついた映像の動きや構図、そして緊張感あふれる完璧な演出で、観客を飽きさせるどころか混乱さえ巻き起こした。その後しばらくは、自らメガホンを取ることのなかった彼が5年ぶりに手掛けた作品は、実在の連続殺人鬼“ゾディアック・キラー”を題材にした「ゾディアック」(2006)。事件の犯人探しを描くのではなく、本事件への執着に人生を絡めとられた人々を繊細に捉え、人間の内面を深く探る人間ドラマへと仕上げた。常に社会と向き合いながら、作品ごとに自分のスタイルを探求していくフィンチャー。次回作「ザ・キュリアス・ケイス・オブ・ベンジャミン・ボタン(原題)」では、ブラッド・ピット、ケート・ブランシェットを主演に迎え、50歳の中年として生まれ、成長するにつれて若返っていく男性を描く。

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三池崇史

観客に媚びない自由奔放な奇才監督
三池崇史監督作「妖怪大戦争」(2005)が3月21日(金)日本テレビ系で放送。グロテスク過ぎる描写や激しいバイオレンス・シーンの数々、また、破天荒な設定やストーリーなど奇抜な作品を多く作り出す三池監督。そんな彼の作風を広く人々に知らしめたのが、新宿・歌舞伎町を舞台に、ギャングと刑事の激闘を描いた「DEAD OR ALIVE 犯罪者」('99)。劇中、空から車が落ちてきたり、主人公がバズーカー砲をぶっ放したりなどハイテンションな映像と展開で観客を驚かせた。2001年には「殺し屋1」で、目を覆いたくなるほど生々しい人間の内臓の散乱や拷問シーンで強烈なインパクトを残す。これら“ぶっとんだ”三池ワールドは、受け入れられる観客とそうでない観客にはっきりと別れる。元々、映画学校に通いながらも“映画監督になるつもりは無かった”と語る三池監督。そんな監督だからこそ、興行的ヒットを狙った老若男女に受け入れられる正統派作品ではなく、自分が面白いと思えるかを基準にした自由奔放な製作スタイルを貫いてきたのだろう。それでも、独特な興奮と笑い、恐怖を与えてくれる稀有な三池作品は若者を中心に多くの観客を魅了し、'91年に監督デビューして以来、製作していない年はないという多作ぶり。携帯電話が導く死の恐怖を描く「着信アリ」(2003)は一大ブームを巻き起こし、昨年公開の「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」(2007)は西部劇と日本の時代劇をごちゃ混ぜにした破天荒さで話題に。また同年公開の、不良生徒が集まる男子高校の覇権をめぐる抗争を描く「クローズ ZERO」(2007)は大ヒットとなった。常にどんなアイデアで挑んでくるか分からない三池監督の新作は、若者たちが“宇宙は造れるのか”という疑問に挑むSFラブコメ「神様のパズル」で6月7日(土)公開。往年の人気アニメ「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」の実写映画化「YATTERMAN」の製作も2009年の公開を目指して進行中で注目を集めている。

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アン・リー

人間の内面を巧みに描きつづける、アジア人初のオスカー監督
監督作「グリーン・デスティニー」(2000)が6日(水)にNHK衛星第2で放送。「ブロークバック・マウンテン」(2005)でベネチア国際映画祭の金獅子賞をはじめ、数々の賞を受賞したリー。今や、世界的名監督である彼のデビュー作は、ニューヨークで結婚した息子夫婦を訪ねた父親が、カルチャーギャップにとまどいながらも、交流を持とうとする姿を描いた「推手」('92)。以降の、同性愛を隠した息子が偽装結婚する「ウェディング・バンケット」('93)、愛を模索する3姉妹を描いた「恋人たちの食卓」('94)が「推手」を含めて“父親3部作”と称されている。いずれも両親、とりわけ父親の心情描写が細やかに描かれ、リーが人間ドラマ派の監督であることが、デビュー当初からうかがわれた。そんな彼の名が一躍世界に知られたのは、台湾、香港、中国、アメリカの才能を結集させた「グリーン・デスティニー」。高度なワイヤーワークを駆使したアクションシーンはもちろん圧巻だが、それとともに男女の深い愛の物語も丁寧につむぎ、アカデミー賞外国語映画賞など4部門を受賞。そして2003年、「監督として好奇心を感じた」と言う、マーベル・コミックシリーズのひとつ「ハルク」に挑戦。ワイルドで攻撃的な超人ハルクの世界にもリーは、彼の内面を描くことをブレンドさせ、ハルクをただの怪物にはしなかった。この自身初となるハリウッドメジャー作品をヒットさせたリーは、同性愛者のピュアで痛切な愛の物語「ブロークバック・マウンテン」に取り掛かる。会話の少ない主人公2人の心情を雄大な景色に重ね合わせ、静ひつな場面の中に2人の情熱的な愛を生み出し、見る者の胸をふるわせた本作は、アカデミー賞作品賞に本命視されながらも涙をのむ結果に。しかしながら、監督賞を受賞しアジア人初のオスカー監督となった。「ブロークバック―」を通して人間の心の深い部分に触れる作業を繰り返した彼の新作「ラスト、コーション」は2月2日(土)公開。「ブロークバック―」の姉妹作品とも位置付けられる本作は、1人の女スパイの愛の葛藤を描く官能サスペンスで、リーにとって7年ぶりのアジア帰還作となった。“いい作品を作れば、どこでも通用するものだ”と語るように、過激な性愛描写が物議を醸しながら、ベネチア国際映画祭で2度目の金獅子賞受賞をはじめ、各方面から高い評価を得ている。

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森田芳光

多様な意欲作を発表しつづけ、日本映画界を牽引する監督
森田芳光監督作「間宮兄弟」(2006)が1日(火)にテレビ東京系で放送。'81年、青春グラフィティー「の・ようなもの」で、助監督の経験もない新人がいきなり劇場映画に進出するという、当時では画期的なデビューを果たした森田。落語家たちのとぼけた日々に焦点をあて、風俗嬢や、女子高生、都会人などの人物像を新しい視点で描き、雰囲気が面白い作品としてその才能を世間に知らしめた。出世作である'83年の「家族ゲーム」では、松田優作ふんする風変わりな家庭教師を迎えた一家の姿をユーモラスに描いた。独創的な画面構成と辛らつな人間観察眼、シニカルなユーモア、斬新な演出が高く評価され数々の映画賞を独占。以降「ときめきに死す」('84)、「そろばんずく」('86)「悲しい色やねん」('88)「キッチン」('89)「おいしい結婚」('91)など、話題作を次々に発表。'96年の「ハル」では、パソコンの字幕画面が作品の大半を占めるという実験的手法にも挑戦し、恋愛映画として魅了しながらも、映像表現への飽くなき開拓精神を見せつける。そして、'97年には、渡辺淳一原作の「失楽園」を監督。不倫の果てに行き着く男女の“究極の愛”をスタイリッシュな映像でつづり、興行収入40億円を超えるヒットを記録。監督の地位を不動のものにする。その後、「黒い家」、「39 刑法第三十九条」(共に'99)、「模倣犯」(2002)と犯罪ものが続いたが、人間、そして家族を描いてきた監督だったということを思い起こさせるように「阿修羅のごとく」(2003)を発表。翌2004年に、普遍的な人間の愛憎の行く末を具現化したラブストーリー「海猫」。2006年、「間宮兄弟」で久々にコメディーに回帰し、2007年には、直木賞作家・奥田英朗原作の「サウスバウンド」、そして初の時代劇にして名匠・黒澤明監督の「椿三十郎」のリメークに挑んだ。ジャンルにこだわらず、多様な作品をコンスタントに発表しつづける森田。常に娯楽に徹しながらも、実験的な手法を随所に見せ、天才的な演出力と独特の映像技術を持ち合わせる監督として今や、日本映画に欠かせない存在となった。「椿三十郎」という高いハードルを越えた森田が、今後どのようなハードルを自分に課すのか、次回作に期待したい。

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堤幸彦

娯楽作良し感動作良しの器用な映像作家
堤幸彦監督作「トリック 劇場版」(2002)が11月11日(日)テレビ朝日系で放送。シニカルでテンポよい笑いと、凝ったカメラワークや編集による斬新な映像が魅力の堤。その魅力で現在、日本映画界の第一線で活躍する堤だが、実は最初から映画の世界を目指していたわけではない。CM、ミュージックビデオ、TVのバラエティー番組などのディレクターと、さまざまなジャンルで活躍し、そこで磨かれた独特のセンスによって“ケイゾク”('99)、“トリック”(2000-2005)などのTVドラマをヒットさせた。人物の顔を半分しか映さない撮り方や、画面を湾曲させ異様な雰囲気を作リ出すなどのインパクトある映像と、連発されるギャグや登場人物たちの絶妙な掛け合いが新味で多くのファンを獲得。それらの映画化により映画界でも知名度を上げた堤は、青春群像コメディー“ピカ☆ンチ”シリーズ(2002、2004)なども成功させる。そんな娯楽作品で定評のある堤が、渡辺謙プロデュースによる「明日の記憶」(2006)で新たな一面を開花。若年性アルツハイマー病と向き合う夫婦の姿を描くという重いテーマのこの作品。堤の“人間を見る目”を買って監督に起用したという渡辺がにらんだ通り、夫婦愛、病を患った主人公の苦悩をしっとりと、また激しく表現した。人間の機微を丁寧に描き、これまでと違う質感の作品で観客を驚かせた堤は、他人の心を癒やそうとする中で、自分自身に向き合っていく10代の少年少女たちの姿を描いた「包帯クラブ」(2007)や、不器用な男性と彼に尽くす女性の愛が温かい「自虐の詩」(2007)など、心情重視の作品を続けて制作。最新作としては、TVドラマ「スシ王子!」(2007)を映画化したコメディー「銀幕版 スシ王子! ニューヨークへ行く」、竹中直人と吉永小百合ふんする夫婦の愛を描く「まぼろしの邪馬台国」、浦沢直樹の人気コミックを実写映画化するサスペンス・アドベンチャー「20世紀少年」とバラエティー豊かな作品が目白押しだ。

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ティム・バートン

子ども心を忘れないハリウッドきってのオタク監督
監督作「PLANET OF THE APES 猿の惑星」(2001)が17日(日)にテレビ朝日系で放送。バートン監督作品の魅力は、不気味なものを描いても、不思議と残酷さや恐怖は感じられず、むしろユーモラスでメルヘンチックであるところだ。「ビートルジュース」('88)のマイケル・キートンふんする幽霊をはじめ、「シザーハンズ」('90)のハサミ手の改造人間など、本来はグロテスクなはずのキャラクターを、バートンはなんとも愛嬌のある人物に創り上げている。そしてこれらの主人公はみな、ふだんは人から忌み嫌われていて、ちょっと屈折してはいるけれど心の優しい人物ばかり。このようなマイノリティーの存在にスポットを当てるのも、彼の作品の特徴である。「マーズ・アタック!」('96)で大スター演じる政府の要人が次々と火星人に殺され、落ちこぼれの青年や老人がヒーローとなってしまうところなどに、バートンのマイノリティーに対する愛が感じられる。この作品については「大スターがあたふたしているのを見るのは楽しい」と言っていたバートン。「PLANET OF THE APES~」でメジャーな俳優たちにサルを熱演させたのも、いかにもバートンらしいところだ。「ビッグ・フィッシュ」(2003)では独自のファンタジー感を損ねることなく、大人向けな内容の感動作を完成させ新たな一面を見せた。「スリーピー・ホロウ」('99)などで度々コンビを組んだジョニー・デップを主演に迎えた「チャーリーとチョコレート工場」(2005)では、バートン監督らしい原色をメーンに使ったカラフルなセットが組まれ、誰も見たことのないチョコレート工場を作り出した。さらに「チャーリー~」は日本国内で興行収入50億円を超える大ヒットも記録している。現在はミュージカル、スウィニー・トッドの映画化作品「Sweeney Todd」で監督を務める。主演をバートン作品の常連デップ、共演にヘレナ・ボナム・カーター。

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北野武

自らを“壊して”進化を続ける“世界のキタノ”
監督兼主演作「座頭市」(2003)が3日(日)にテレビ朝日系で放送。先日まで開催されていたカンヌ国際映画祭のレッドカーペットに、和服にちょんまげのかつら姿で登場して相変わらずのやんちゃぶりを発揮した北野監督。2日(土)から公開になる新作「監督・ばんざい!」(2007)でも、その内容の奇想天外ぶりが話題となっている。そもそも「ソナチネ」('93)や「HANA-BI」('97)など、青を基調とした“キタノブルー”といわれる映像や、暴力や死をテーマに独特の静けさや哀愁を漂わせる作風で知られる北野監督。だが、彼の作品は一方で「みんな~やってるか!」('94)「TAKESHIS'」(2005)などの、いわゆる“ぶっとんだ”顔も持っている。最近では「TAKESHIS'」「監督・ばんざい!」と後者の作品が続き、観客に多少なりとも混乱を呼んでいるが、過渡期ともいえるこの2作で、彼は“自分を壊しにかかっている”と発言している。得意の暴力映画を撮らないと宣言した映画監督キタノがあらゆるジャンルの映画に挑戦しては失敗するという「監督・ばんざい!」のストーリーは、北野監督自身が“バイオレンス”など勝手に決め付けられた自分の映画に対する固定したイメージを、一度ぶち壊したいという意志の表れでもある。また、初めてエンターテインメントに徹してつくりあげた「座頭市」では相当のフラストレーションを感じたようで、その不満も「監督・ばんざい!」のような映画を撮ることにつながっているという。それを“膿を取って修復するような気分”と表現する彼は、“もうちょっと無茶をやったら、いずれは正統派大作やエンターテインメント映画を撮りたい”とも語っている。彼が何年先かに“膿”を出し切った後、一体どのような巨匠へと進化していくのか楽しみだ。

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宮崎駿

冒険心や好奇心をかきたてる作品を作り続ける日本アニメ界の巨匠
宮崎駿監督作「千と千尋の神隠し」(2001)が2月2日(金)に日本テレビ系で放送。スピード感にあふれた演出、個性的で不思議な魅力を持つキャラクター、細部にわたって綿密に考えられたシナリオなど、作品を発表するたびに高い評価を得てきた宮崎監督。自然と人間の共存の在り方を問うSFファンタジー「風の谷のナウシカ」('84)で一躍有名になった後も、伝説の浮島をめぐるアドベンチャー「天空の城ラピュタ」('86)の連続するダイナミックな映像や、けなげな姉妹と不思議な生き物との交流を描いた「となりのトトロ」('88)の懐かしい日本の風景美などで、子供のみならず大人の心もつかみ、その人気は国民的なものとなった。'97年には、これまでの“宮崎アニメ”の殻を破るべく、残虐な描写も辞さず挑んだ「もののけ姫」が大ヒット。完全主義ゆえの体力と精神の限界から「もののけ姫」の製作を最後に監督引退を宣言していたが、その後、引退を撤回し「千と千尋の神隠し」を発表。フルデジタルの圧倒的な映像美が話題となり、観客動員数2350万人、興行収入304億円など日本映画史の新記録を樹立したほか、米アカデミー賞では長編アニメーション賞、ベルリン国際映画祭ではアニメ作品として史上初の金熊賞(グランプリ)に輝くなど、世界に“宮崎アニメ”の名を知らしめた。SMAPの木村拓哉が声優に初挑戦した「ハウルの動く城」(2004)では、魔女ののろいで老婆にされてしまった少女とハンサムな魔法使いの恋模様を、ユーモラスかつ躍動感たっぷりに描き健在振りをアピール。現在は次回作の準備に取り掛かっているとのことで、内容についてはまだ明らかにされてはいないものの、公開が待ち遠しい。

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三谷幸喜

ハートウォーミングな笑いを巻き起こす現代の喜劇の王様
三谷幸喜監督作「THE 有頂天ホテル」(2005)が30日(土)にフジ系で放送。劇作家として活躍した後、TV界に進出し、脚本を手掛けたTVドラマ「古畑任三郎」('94~2006)で人気者になった三谷。“笑わせるための芝居なんかあってはいけないという精神には腹が立つ”と語る三谷作品の特徴は、とことん人を楽しませることにこだわったエンターテインメント精神だ。「アパートの鍵貸します」('60)などのウェルメイドなコメディーで知られるビリー・ワイルダー監督の影響を公言しており、三谷作品で繰り広げられる洒脱な会話や練られた脚本は、“和製ビリー・ワイルダー”という形容も納得だ。抜群のコメディーセンスで多くのファンを獲得した三谷は、自ら手掛けた舞台劇を映画用にリライトした「ラヂオの時間」('97)で、満を持して映画監督デビュー。生放送中のラジオスタジオを舞台に、奇想天外な騒動が展開するコメディーで、日本アカデミー賞脚本賞を受賞。この作品のような、個性的なキャラクターたちが特定の場所でドタバタ騒動を繰り広げるタイプのシチュエーション・コメディーは彼のもっとも得意とするところ。「12人の優しい日本人」('90)、「竜馬の妻とその夫と愛人」(2002)、「笑の大学」(2004)など、過去に作・演出などを手掛けた舞台劇が映画化されることも多く、その際には自身で脚色を務めている。最新作「THE 有頂天ホテル」は大ヒットを記録し、老若男女を温かな笑いで包み込んだ。“自分が楽しめないものを、観客が楽しめるはずがない”と語る三谷は、誰よりも笑いを愛し、愛すべきコメディーを作り続けていくだろう。

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山田洋次

庶民の日常を温かく描く名匠
山田洋次監督作「たそがれ清兵衛」(2002)が22日(金)に日本テレビ系で放送。義理と人情に弱い“寅さん”が主人公の長寿シリーズ“男はつらいよ”('69~'95)に代表されるように、一貫して庶民の生活に焦点を当て、彼らの素朴で朗らかな生き方を描きつづけてきた山田監督。高度経済成長の波にのみ込まれながらも、砕石運搬船の仕事をしてたくましく生きる夫婦の姿を描写した「故郷」('72)。刑務所帰りの男が、偶然出会った若い男女とともに、妻のいる家へと向かう「幸福の黄色いハンカチ」('77)では、世代を超えた人のつながりを感動的に映し出し大ヒットに。ほかにも、田舎に住む父と都会に暮らす息子との不器用な交流を描いた「息子」('91)、夜間学校、職業訓練校などの学校を舞台に、教育問題を扱った“学校”シリーズ('93~2000)と、社会からはみ出した人たちの哀歓や孤独を温かく描いた多くの名作を生み出す。刺激的な展開や映像で見せる作品が多い現代の映画の中で、古きよき日本の日常風景をとらえ、暴力シーンのない穏やかな雰囲気をもつ山田作品はまれな存在であり、それが広い層に彼の作品が愛され続ける理由だといえる。2002年には、山田監督同様に、一貫して市井の人々を描いた藤沢周平の小説を原作に「たそがれ清兵衛」で初の本格的な時代劇に挑戦。武士を主人公にしながら、物語のメーンを、決闘シーンではなく家族との日常生活に置き、リアリズムを追求した。藤沢の小説の映画化は「隠し剣 鬼の爪」(2004)、現在公開中の「武士の一分」(2006)と続いており、これらは時代劇3部作と呼ばれている。75歳を迎えながらも、いまだ製作に意欲的な山田監督の次回作は、戦時中の東京を舞台に、治安維持法違反で検挙された父親の帰りを待つ母子の姿を描く「母べえ」。山田作品に久々の出演となる吉永小百合が主演を務める。

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