きっかけは子どもの一言から…絵本作家・真珠まりこが“もったいない”で命の大切さを伝える

テレビ東京系では3月20日(金・祝)、絵本作家・真珠まりこ氏の絵本を原作とした「テレビ北海道開局20周年特別番組 もったいないばあさんと考えよう世界のこと」を放送する。
同番組は、気候変動、災害、環境問題、戦争、貧困など地球上で起きているさまざまな問題と、それに巻き込まれている世界の子どもたちの現状が、わたしたちの生活とどのようにつながっているのかを考えるドキュメンタリー。絵本に登場する“もったいないばあさん”がガイド役となり、命の大切さを伝える“もったいない”というメッセージを分かりやすく視聴者へ届ける。また、原作者の真珠氏自身がインドへ渡り、「児童労働」の現場のリポートを行った。現地インドでの様子をはじめ、今回の番組制作にいたるまでの経緯、“もったいない”に込められた思いなどを真珠氏に聞いた。
――“もったいない”という言葉に触れたきっかけは何だったのでしょうか?
息子が小学4年生の時、食べ残しをしていたので「もったいないから全部食べてね」って言ったんです。すると、息子から「もったいないってどういう意味?」って聞かれて、初めて言葉に詰まったんですね。ほかの言葉は全部子どもに分かるように言い換えることができたのに、もったいないは一言で言うことができなかった。物を大事に思う背景も説明しなくちゃいけないと思い、ご飯やおかずがテーブルに並ぶまでに、農家の方が雨の日も風の日も畑や田んぼを耕して作ったこと、お父さんが一生懸命働いてそれを買っていること、お母さんが一生懸命料理を作っていることを話して。「それでも残して平気?」って聞いたら「ううん」って言うんですけど、途中で聞いてないんですよ(笑)。子どもには長々説明しても分からないけど、イメージで理解することはできると思うので、読んで理解できる絵本を自分で作ろうと思ったのが、この絵本「もったいないばあさん」なんです。
――なぜ、キャラクターをおばあさんにしたのでしょうか?
よく「なんで、おじいさんじゃないの?」って言われるんですけど、自分はおばあさんが自然だと思ったんですね。うちのおばあちゃんは小うるさい人じゃなかったけど、物のない時代も経験しているので、わたし自身“もったいない”って言われて育っているんです。だけど、現代は物があふれているから、例えば壊れても買った方が安かったりしますよね。直す時間やお金を考えると買ったほうが安いって、子どもたちがどんどん使い捨てることに罪悪感を抱かなくなったらと思うと、怖くなりました。子供は悪気がないのでそういう生活が自然だと思ってしまうかもしれない。これはちゃんと伝えていかなきゃと思ったんです。
――そうして'04年10月に「もったいないばあさん」の絵本が誕生。以降、シリーズ50万部、さらに毎日新聞や朝日小学生新聞など各メディアを通して“もったいない”の精神を伝えてきました。その後、'08年からは地球上で起きている問題と、それに巻き込まれる世界の子どもたちの現状を伝える「もったいないばあさんワールドレポート展」の開催へと活動が広がりましたね。
地球で起きている問題と自分たちのつながりを伝えるのがワールドレポート展の目的です。これも子どもの一言がきっかけ。9歳になった子どもと厳しい環境に暮らす子どもの特集番組を見ていたんです。そうしたら、子どもが「自分は日本に生まれて良かった」って、全然悪気なく言うんですよ。地球で起きている問題と自分たちが、本当は全部つながっているっていうのを自分も子どもに説明できるぐらい分かってなかった。自分が知りたい、話せる大人になりたいと、地球環境パートナーシッププラザの方に教えてくださいってお願いしたのが開催への始まりでした。
――地球環境や未来と聞くと、別次元の話と思ってしまいがちですが、真珠さんは子どもを通して身近なことに感じられたのでしょうね。
親として子どもにちゃんと伝えたいという気持ちなんですよね。自分の子どもに分かるように言えば、ほかの子どもにも分かってもらえるかなと。せっかくだから広く伝えたいなと。そのころ、もったいないばあさんは、“もったいない”の意味を伝える絵本として多くの方々に読んでいただけるようになっていて、子どもたちもよく知ってくれていたので、わたしが言うよりもったいないばあさんが言ったほうがみんな聞いてくれるんじゃないかなと思い、ワールドレポート展のガイド役にしました。もったいないを突き詰めていくと、命の大切さを伝える言葉なんですね。「命こそが一番大切なんじゃよ」というもったいないばあさんのメッセージを感じていただければと思います。
――そこでのギャラリートークをまとめた本が、同番組の原作となっているんですよね。
今回は「児童労働」をテーマに実際にインドも訪問されましたよね。
「児童労働」は、自分が一番気になる問題。地球で起きている問題には、弱い立場の子どもたちが巻き込まれて犠牲になっていると思うんです。子どもたちは地球の未来を作っていく人たちだから、何が正しく、何が悪いか、大切なことは何かをちゃんと分かる大人になってほしい、地球をどうしたらみんなで平和に暮らせるか、考えてもらいたいんです。でも、心も体も頭も育つ大事な時期に学校に行けず、ただロボットのように働かされたり、機械のように使われたりするなんて…その現状も命が大切にされていないということだと思います。
――働かされている子どもが何千万人も存在するということを知って驚きました。
世界では1億5800万人の子どもたちが働かされていると言われています。インドで働く子どもたちは、10年前に政府が1260万人と発表しました。でも、NPOは6000万人はいるだろうと。実際には本当の数は分かりません。インドでは、カメラを向けると雇い主が自分の子どもだってうそをつくんです。14歳以下の子どもを働かせることは法律で禁止されているので、見つかると、雇い主は服役したり罰金を払わなければなりません。だから、カメラの前では警戒して本当のことを言ってくれない時も多かった。デリーなどの都会ではとくに、取材は大変でしたね。カメラが回っていないときは本当のことを言っているのに、実際に撮影し始めると話してくれない。多くの子どもたちが不法に働かされている工場にも取材を交渉したけれど、入ることはできませんでした。
――ほかに、ロケで特に印象に残っていることはありますか?
2カ所のドライブインで12歳の男の子と会ったんです。2人とも学校に行っておらず、行ってもしょうがないってあきらめている。希望がないような状態で笑顔がなく、暗い表情をしていました。誰か気にかけてくれる人がいるのかなって、ずっと気になってたんですけど、何もしてあげられなかった…。日本のうちの子どもと大して変わらない年なのに、同じ地球の子どもなのに、こんなに違うのって落ち込んでしまったんです。そんな中、NGOの方が働く子どもたちのいる場所を特定できたらレスキューの対象にできるって言ってくださって。今回の映像を見せてお願いしようと思っています。
――ところで、元ル・クプルの藤田恵美さんが歌う番組の主題歌「もったいないばあさんの子守唄」の作詞作曲も担当されたそうですね。
作曲というか口ずさんだものをちょっと譜面に書いたら音楽にしてくださって。作曲家として名を上げる野望はないんですけど(笑)。形にしていただけてうれしかったですね。すごくいいんですよ。昔からあったような曲で、耳に残る。子どもたちを、よしよし、もう泣かなくていいんだよってやさしく包み込むような子守唄なんです。
――最初の子どもの一言からはじまった“もったいない”の活動。絵本、レポート展、テレビ番組、主題歌とどんどんメッセージを伝える場が広がりましたね。
そうなんですよ。息子は「いやあ、僕の一言でずいぶん話が大きくなったもんだね」って(笑)。今後はワールドレポート展の第2弾を考えています。第1弾は、地球で起きている問題の全体像とわたしたちの暮らしとのつながりをお伝えてしていますが、第2弾は、2010年に、愛知県で開催される予定の生物多様性国際会議に向けて、世界の生き物が消えるという問題をまとめてお伝えしたいと思います。
――では、これからも「もったいないばあさん」シリーズはメーンの活動として取り組まれていかれるんですね。
はい。ライフワークです。もったいないばあさんだからこそ、できることってあると思うんです。今の時代に必要なメッセージを伝えることができるキャラクターだと本気で思っているので、これからも多くの方々に伝えていきたいですね。
「テレビ北海道開局20周年特別番組 もったいないばあさんと考えよう世界のこと」
3月20日(金・祝) 朝10:00-10:55 テレビ東京系で放送
写真提供:毎日新聞社









