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“カンヌから愛された男”小林政広監督にインタビュー

仲代達矢主演の「春との旅」(来年公開予定)の撮影を終えたばかりの小林政広監督

ことしも5月13日(水)からフランスで行われるカンヌ国際映画祭。同映画祭に「海賊版=BOOTLEG FILM」('99年)、「KOROSHI 殺し」('00年)、「歩く、人」('01年)と、日本映画として初めて3年連続で正式出品を果たすという偉業を成し遂げた鬼才・小林政広監督。自身のプロダクション製作による低予算の作品が多いが、その独自の作風は「愛の予感」('07年)でロカルノ国際映画祭金豹賞(グランプリ)を受賞するなど、海外での評価が高い。CS放送の日本映画専門チャンネルでは、5月に代表作である「バッシング」('05年)をはじめとする彼の作品8作を放送する。EXILEの眞木大輔を主演に迎えた、オールフランスロケの新作「白夜」の公開も先ごろ決定した小林監督に話を聞いた。


――小林監督のデビューは42歳の時で、ほかの監督と比べると“遅咲き”といえるかと思います。初めて監督を志されたのは、10代のころにフランソワ・トリュフォー監督の映画「大人は判ってくれない」('59年)を見てからだそうですが、実際に映画監督になるまでには、林ヒロシという名でフォークシンガーとして活動したり、郵便局員、脚本家とさまざまな職を転々としています。その長い間、ずっと映画監督になりたいという気持ちは持ち合わせていたのでしょうか?


なりたいなりたいと思っていても、どうやってなればいいのか分からない。どんなにマイナーだろうが、ちゃんと劇場でかかるようなものを作らなければやる意味ないなと思っていたけど、劇場でかかる映画を監督する方法がないんですよね。当時は(映画会社が)助監督の採用をしていたけど、高卒ですから、なかなかそういうところにも入れないし。(映画監督の)ローレンス・カスダンが、広告代理店で働きながら書いたシナリオをスティーブン・スピルバーグに認められて、1本が「Oh!ベルーシ 絶体絶命」('81年)、もう1本は「ボディガード」('92年)と映画化され、自身も「白いドレスの女」('81年)で監督デビューを果たした。いいシナリオを書けば、自分が監督できるチャンスもあるなって思って、シナリオ書き始めたんですよ。それしか方法がなかった。


――フォークシンガーをされていたのは、また映画とは別の興味からなんでしょうか?


歌作りも短編映画みたいなところがある。目をつぶって聴いてたら映像が浮かぶわけですよ。だから僕にとっては映画作りなんだよね。映画作りと音楽作りというのは、同じ時間の芸術で、あんまり変わらないんですよ。どのぐらい人を気持ち良くさせるか。お客さんをどのくらいその世界の中に引き込めるかじゃない。音楽と同じでしょ。


――監督の作品は、いわゆるハリウッドの王道娯楽作とは一線を画した、定型にはまらない魅力があります。そうした起承転結がはっきりした王道の作品にはあまり関心はないのでしょうか?


もちろんそれが基本なのね。でもそれを壊していかなきゃ自分の映画にならないんだよね。どう壊していくか。その壊し方も、自分の中では納得のいく壊し方じゃないと駄目だし、毎回どう壊していくか難しいところあるんですよ。


――監督は割とコンスタントに撮り続けていますが、中には1作撮っただけで終わってしまったり、何年も撮れない人もいます。監督が撮り続けられている理由は何なんでしょう?


やっぱりトリュフォーから学んだんですよ。例えば「バッシング」って映画を作ったじゃない。で、カンヌのコンペにかかった。そうすると普通は3年くらい作らないんですよ。予算を集めて、次で勝負するようなやり方をするのが賢い人なんだけど、僕の場合はやっぱりトリュフォーのやり方をまねしたいってところから始まったんで、中途半端な映画でもいいから毎年作っていたい。寡作で5年に1本っていうタイプじゃないんだよね。沈黙してりゃあその分どんどん価値は上がってくわけですよ。でもそういう権威というか、偉くなりたくないのね。やっぱり早く作りたくなっちゃうんだよね。予算が少なくても。


――1億円で映画を1本撮るよりも、1000万円で10本撮った方がいい、という感じですね。


そうそう、予算が上がれば上がるほどいろんなリスクもあるし。やっぱり予算掛けるなら、最低元取れるくらいの目標と、それプラス映画の質的にもいいものを作りたい。一応プロデューサーとかもやったりしてると予算内に上げるという責任もあるからね。ある程度売れないと駄目なんじゃないか? とか考えるけど、到底当たりそうにない企画を持ってきて、これで当てろと言われたってねえ…。でも、やらないより、やった方がいいわけでね。そういうすき間で僕たちはやってるから。ずっとすき間なんですよ。ライター時代も。すき間でやってたから。


――ピンク映画の脚本も書かれていたんですよね?


ピンクもそうだし…。すき間は強いんですよ、不況に(笑)。すき間は強いよ。


――そういうすき間の方が面白いテーマがあったりするんですか?


やっぱり予算が少ないからさ、企画力しか勝負するとこないし。


――監督の作品は北海道で撮影された作品が多いですが、何か理由はあるんですか?


僕東京生まれだから。江戸っ子って、地元で映画作って「あいつの息子、この前までギターやってたと思ったら今度は映画作ってる」みたいに言われるのが嫌なの。人知れずやりたい。江戸っ子って故郷に錦を飾る精神はあまりないから。九州の人とか北海道とかの人は地元で作ったりなんかするとヒーローになれるけど、東京生まれが東京で映画作ってもヒーローになれないんだから。うっとうしがられるだけ(笑)。


――世間からはみ出た人間を描いている作品の内容と、北海道の荒涼とした風景がマッチしてますよね。


もともと逃避願望があるんですよ。そこにいるところから逃げ出したいみたいな。話はみんなそうだよ。どっかから逃げ出して北海道来たみたいな。アウトローっていうか、外れた人間の話だから。北海道ってそういう外れた人間をちゃんと無視してくれるんだ。どんなに田舎に行ってもすごい都会的なの。人のことは関知しない。


――なるほど。では最後になりますが、今後の展望についてお話しいただいてもいいですか?


将来的には、そろそろ映画祭はやめて、質の高い娯楽映画を作りたいんですよ。前からそれが作りたくてやってきたんだけど、たまたま1本目から映画祭にかかっちゃったり賞取ったりしてるからそっちの(映画祭向けの作品の)方に行っちゃったんだけど、ほんとはちょっと質の高い娯楽映画、喜劇を作りたいな。やっぱり松竹の「寅さん」や東宝の「若大将」、東映の「仁義なき戦い」で育ったしね。


――これからもすき間を狙っていく感じですか?


そうだねえ、「寅さんの息子」とか、そういうのやりたいんだよね。実は隠し子がいた、みたいな(笑)。前から言ってんだけど、権利問題大変でね(笑)。


――ネタとしてはアリだと思います!


そうでしょ? これはシリーズものだね(笑)。


【プロフィール】
こばやしまさひろ='54年東京生まれ。フォーク歌手、シナリオライターとして活動後、'96年に「CLOSING TIME」で映画監督デビュー。その後「海賊版=BOOTLEG FILM」('99年)、「KOROSHI 殺し」('00年)、「歩く、人」('01年)で3年連続カンヌ国際映画祭出品の快挙を成し遂げる。さらに「バッシング」('05年)で同映画祭コンペティション部門に出品を果たし、東京フィルメックスで最優秀作品賞(グランプリ)を獲得。主演も兼ねた「愛の予感」('07年)ではロカルノ国際映画祭金豹賞(グランプリ)を受賞するなど、現在世界で注目を集める監督の1人。


カンヌ国際映画祭関連企画監督 小林政広のシネマワールド
「フリック(R-15)」
5月11日(月) 夜0:00-3:00

「海賊版=BOOTLEG FILM」
5月12日(火) 夜1:00-3:00

「KOROSHI 殺し」
5月13日(水) 夜0:00-1:40

「歩く、人」
5月14日(木) 夜0:00-2:00

「幸福 Shiawase」
5月15日(金) 夜0:00-2:00

「 CLOSING TIME」
5月15日(金) 夜2:00-3:30
日本映画専門チャンネルにて放送


http://www.nihon-eiga.com/0905/0905_2.html

映画「白夜」
'09年全国ロードショー

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