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北川景子が初時代劇「花のあと」の現場でつかんだ“物作り”の姿勢

映画「花のあと」(北川景子)

藤沢周平原作の映画「花のあと」が3月13日(土)より公開される。これに合わせ、時代劇専門チャンネルでは、「映像で綴る藤沢周平の世界」を3カ月にわたり放送中。3月8日(月)からは、時代劇情報番組「瓦版」で同作に主演する北川景子のインタビューが放送されるほか、3月には「蝉しぐれ」「闇の歯車」などもラインナップされている。

本作は、江戸時代・東北地方の海坂(うなさか)藩を舞台とした物語。武家の娘として生まれた以登(いと/北川)は、女性である自分と対等に剣術の試合をしてくれた下級武士・江口孫四郎(宮尾俊太郎)に恋心を抱く。しかし、彼女には風采の上がらない片桐才助(甲本雅裕)といういいなずけがいた。家の都合で妻をめとった孫四郎は、藩の上役・藤井勘解由(ふじいかげゆ/市川亀治郎)の陰謀により命を落とす。以登は才助の力を借りながらその事実を突き止め、仇討ちを決意する。

本作で時代劇に初挑戦し、吹き替えなしで激しい殺陣もこなした北川に、撮影の裏側と時代劇の魅力について聞いた。


―――本作に出演されるにあたって、どんな準備をされましたか?

撮影は2カ月間だったのですが、準備期間を含めると半年以上かかったんです。まずは袴を着た状態で刀を抜いたり納めたりする動作の練習から始めました。そのあと、刀を振り上げて下ろすというようなシンプルな動きを教えていただき、最終的には劇中で披露している殺陣の稽古までという風に段階を踏んで。ウエイトトレーニングなどはしませんでしたが、多い時は週に3回くらい殺陣の練習をしていたので必要な体力は自然と身に付きました。竹刀、木刀、竹光を使って練習したんです。


―――本格的な殺陣のシーンが何度か出てきますが、練習も含めてケガなどはなかったのでしょうか?

ケガはなかったけど、手に豆ができてそれがつぶれて…ということの繰り返しでしたね。その状態はクランクアップまでずっと続きました。だからテーピングを巻いたりしながら練習と撮影を続けたんです。あと、左足に重心が結構掛かるので、左足もだいぶ疲労がたまっていました。


―――殺陣だけでなく、時代劇特有の難しい所作などが多い作品ですが、具体的にはどの辺りが大変でしたか?

身のこなし、所作については本当に大変でしたね。殺陣の基本姿勢も同じですが、着物を着た時は“腰を落とす”というのが基本姿勢なんです。それをしっかり身に付けるまでは、ただ歩くことも難しくて。慣れるだけで1、2カ月は掛かったかもしれません。完成した作品を見た時はそういう基本動作がちゃんとできているのか、その点ばかり気になってしまいましたね。


―――確かに、着物を着て動くというだけでもなかなか難しそうですね。

最初は着物を“着せられている”という感覚しかなくて、体に合わなかったんですよ。だから、撮影が終わって洋服を着ると安心するという感じでした。着物が体にフィットするまでに2カ月くらい掛かったかもしれません。中でも一番難しかったのは、殺陣をしながら演技をする、お茶を淹れながら演技をする…というように、演技と所作を同時にこなさなきゃいけなかったことです。普段は感覚で動いて演技することが多いんですけど、時代劇は段取りも多く、ただ立つ、ただ座るというだけでも難しいんです。


―――ご苦労が多かった中でも特に印象に残っているシーンはありますか?

冒頭のお花見と、最後に土手を歩いていくシーンです。桜の咲いている時期に合わせて撮影をしなければいけなかったので、満開の日に合わせて準備をしていました。そのタイミングを狙っていたので、作品の冒頭と最後のシーンを2日ぐらいで撮ったんですよ。作品の中ではその2つの場面の間に1年の月日が流れているということになっていますから、以登の気持ちを作ることに専念しました。ちゃんと彼女の成長が見えてなくちゃいけませんから。


―――確かにどちらも物語の象徴的なシーンですね。ほかに、試合中の以登が孫四郎に引かれる場面がとても印象的ですが、どんな気持ちで演じたんでしょうか?

当然ですが、以登は孫四郎さんのルックスが良かったから…ということで引かれたわけじゃありませんよね(笑)。“女性だけど対等に相手をしてくれた”“1人の人間として見てくれた”から好きになったんだということはとても納得できました。あの時代の女性は、どうしても男性の後ろを歩かなきゃいけないようなところがあったんだと思うんです。そういうことも踏まえて、対等に見てくれた孫四郎のような男性は珍しかったんじゃないでしょうか。


―――結果的には才助と一緒になるわけですが、ご自身の“本音”としては、孫四郎と才助のどちらがタイプですか?

遠くから見てあこがれる分には孫四郎さんも素敵ですけども、一緒に暮らすならばやっぱり才助さんのほうがいいんじゃないんでしょうかね。才助さんのいいところは、『本当に手伝わなくて大丈夫か?』という問いに対して、以登が『大丈夫』と答えたら、それ以上は干渉してこないところ。でもピンチになった時には、ちゃんと手助けできるところで見守っていてくれるんです。距離を測りながら見守ってくれる感じがいいですね。わたし自身、言葉で『大事だ』とか『好きだ』って言われるのはあんまり好きじゃないので(笑)。


―――「言葉にしてくれなきゃ分からない!」という女性が多いように思いますが?

そうなんですよね。でも、やっぱりわたしはあんまり言われるとダメなんですよ。逆に男性の方から、『言葉にしてほしい』って言われるのも好きじゃない。『言わなくても分かるじゃん!』って思っちゃうんです(笑)。そういう意味でも、藤沢作品はいいですよね。強い思いはあえて言葉にしなくてもちゃんと伝わる、ということがしっかり描かれていますから。


―――では、以登のように“静かに強く思う”役は北川さんにピッタリですね。

今まで現代劇をやってきて、「なんでこの人はここでこんなセリフを言うんだろう…」って納得できなかったり、台本を読んでいて自分のキャラクターとあまりにもかけ離れている役に違和感を抱いたことがあります。でも、以登という役には共感できないところが1つもなかったんですよ。初めての時代劇で演じた役だからということもあるけれど、思い入れの強い役になりました。わたし自身、自分の意志はしっかり持って行動しているつもりですし、“悪いことは悪いんだ!”という風に目をつむれない不器用さは、以登と似ているように思います。


―――そんな以登を演じることで得たものはありますか?

以登という役を演じたこともそうですが、この現場に参加できたことが大きかったですね。現場にいる時の気持ちや、もの作りに対する感覚が変わりました。大学を卒業してから初めて臨んだ作品だったということもあります。ほかの現場だと、すぐに飲み物が出てくるし、寒くないようにしてくれるし、「何もしなくていいんですよ」っていう空気があるんですね。それはもちろんありがたいのですが、この作品の現場には昔からの映画作りを知っているベテランのスタッフさんが多くて、本当にプロフェッショナルな厳しさがあったんです。俳優がえらいんじゃなくて、みんなで作るもんなんだということです。現場で、「照明部は準備OKですか? 衣装部は準備OKですか? “俳優部”は準備OKですか?」って言われたことがすごくうれしくて。今までもたくさんの人のおかげでカメラの前に立てているんだという気持ちはありましたが、作り手の“一員”として現場に入っているんだと強く自覚できました。


―――“古き良き現場”だったわけですね。では、この作品に参加して感じた時代劇の魅力とはどんなものでしょうか?

藤沢先生の出身地である山形県鶴岡市での撮影が多く、地元の方がたくさん参加してくださいました。同じことを繰り返したり、長時間待っていただく場面も多かったけど、最後までご協力してくださる姿を見て、皆さんがいかに藤沢作品と時代劇を愛しているのかが伝わってきました。わたしたちとしては、いい作品を作ることでその気持ちに応えたいという思いで撮影を続けたんです。月並みな言い方になってしまうけど、古き良き時代の文化や情緒を感じることができましたね。時代劇は一見、難しそうな印象があるので敬遠してしまう人も多いはず。でも、この作品をきっかけにその美しさを感じていただけたらうれしいですね。

取材/文=大小田真

映画「花のあと」
3月13日(土)より全国ロードショー
(C)「花のあと」製作委員会
公式HP
http://hananoato.com/


「蝉しぐれ」
3月16日(火)朝9:00-10:00
「闇の歯車」
3月17日(水)昼3:00-4:50
ともに時代劇専門チャンネルで放送
http://www.jidaigeki.com
※リピート放送あり

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