山や森など自然に恵まれた環境から、木を使った建造物と共に生きてきた日本。その歴史と共に蓄積された知識や技術を基に、古くから家具などの良質な木工製品が作られてきた。特に旭川(北海道)、静岡(静岡県)、飛騨高山(岐阜県)、府中(広島県)、大川(福岡県)などは、匠の技を持つ職人たちによる高級家具の存在とともに代表的な家具産地として知られている。

その中で今回注目したいのが、北海道発の工芸ブランド“旭川クラフト”に所属する若手工房集団mickle【ミクル】だ。
旭川は前述のように職人が多く存在し、豊かな森林資源と木材の保存に適した乾燥した気候から家具生産が非常に盛ん。さらに近年は20~30代の若い人材が頭角を現し、家具だけにとどまらず、現代的な感覚にマッチする新しい作品や製品を生み出しているのだ。そんな若手クリエイター集団のプロダクトから、日常空間に違和感無く溶け込み、どこか懐かしさも感じさせる木工アイテムたちを紹介しよう。
to・mo・ni “wrapqarw[ラプカル]”(ウッドコードマネージャ)
ヘッドホンなどのコードを巻きつけ、長さを調整してくれるアイテム。∞のカタチをしたキレイな曲線と木目、レーザーカッターで刻印されたブランド名など、シンプルな中にセンスを感じさせる。今年四月には新たに9色のカラーバリエーションが登場。ファッションやコードの色に合わせて、様々な楽しみ方が出来るようになった。

高橋工芸 “Caraシリーズ”(左) “KAMIシリーズ”(右)
卓越した技術で“シナ”や“栓”の木を削りだし、手に馴染むよう磨きをかけたマグカップ。Caraシリーズはたまごのカタチをモチーフにした、滑らかな曲線が特徴。KAMIシリーズは名前の如く、紙のようにたわむほど薄く仕上げられている。どちらも木の暖かさとともに、口当たりの良さを感じることが出来る。

灯りのたね “Shelly”(左) “灯樹色”(右)
素材に松の木を使った、キノコと樹木型のライトスタンド。傘部分を強度が保てる限界まで薄くすることで、光を透過させている。淡いピンク色の光が、松の美しい木目を優しく浮かび上がらせる姿を見ていると、自然に穏やかな気持ちになれる。

work studio 雅 “薄型名詞ケース”
小さくシンプルながら、手に持った感触が良く存在感のある木製名詞ケース。開閉部分には小型磁石が埋め込まれており、隙間無く加工された造りと相まって、一瞬どこが開くのか分からないほど。このピッタリ感は秀逸。

作り手と木の温もりを感じるモノヅクリを。
mickle【ミクル】は、旭川に住む20~30代の若手クリエイターたちが、モノヅクリにおける情報やトレンドを共有するため自主的に集まった集団だ。上で紹介したように、彼らが作るアイテムは現代的でありながら、規格品では味わえない“素材”と“製作者”の温もりを感じさせてくれる。冬場には-20℃にもなるという極寒の地で、このように温かいモノヅクリをしているのは、どんな人なのか? mickle【ミクル】に参加しているto・mo・ni のヨシダさんに、モノヅクリのきっかけについて聞いてみた。
「単純に、邪魔なコードを何とかしたかったんですよね」

素朴な風貌と落ち着いた口調で、柔和な雰囲気を漂わせるヨシダさんは30歳。実家は家具工房だったが、以前は家業のことに、ほとんど関心がなかったという。
「高校卒業のときも、特に跡を継げと言われなくて。その頃はヴィレッジヴァンガードで働いてました。実はロック系バンドをやってたんで、スカル(骸骨)系アクセサリーの仕入れとかを担当してましたね(笑)。でもある時、父親から家業が大変だから働いてくれないかって言われて……まぁ仕方ないなと」
いきなりの方向転換で戸惑うことはなかったのだろうか?
「家業とはいえ、ずっと関係ないことをしてきたので何も分からない。それに自分は職人でもない。出来ることからやるしかないと、まず経理から始めたんですが……これが今時パソコン一つ無い状態。そこからパソコン買って、ホームページ作ってと、一つ一つ勉強しながらやっていきましたね」
暫くして現場の流れも分かってくると、外から来た人間の視点が違和感を覚えだす。
「僕が入るまでは、ずっと大手家具店の下請けというか、受注家具を作っていました。毎回オーダーに応じてイチから作るんですが、規格品じゃないから、材料を効率よく使うことが難しい。で、結果としてとても多くの切れ端(端材)が出るんです。素材は良くても家具には使えないから、工場の奥に行くとそんな端材が山ほど捨ててある。それはもうホントに沢山。で、これを何とかしなきゃいけないなと思ったんです」
そんなある日、自身の趣味が閃きをもたらした。
「昔から音楽をやっていたので、オーディオ類には結構コダワリがあって。ある日海外のヘッドホンを買ったんです。そしたら異様にコードが長いんですよ。で、邪魔だな~、どうにかできないかな~と思っていたときに、端材を使ったコードを巻くアイテムを閃いたんです」
まさに必要は発明の母。早速、試作品の制作に取り掛かる。
「職人さんに製品のイメージを伝えて、最初は糸鋸を使って作ってみたんです。ある程度の型を抜き、サンドペーパーで仕上げると思ったとおりのモノが出来ました。でも、この方法だと限られた数しか作れない。で、生産効率を上げるために機械を使うことにしたんですが、周りの曲線を削るときの加減が難しく、割れてしまったりと苦労しました。結局、最後の削り工程は手作業で処理するのが一番だと分かり、今でも、一つ一つペーパーがけしています。だから出来上がりは少しづつ違うものになっていますが、それが逆に味になっているかなと思います」
ラプカルを手に取ると、木の素材感と手作業で削られた滑らかな触り心地を味わえ、また木目にそって色が微妙に変化しているので、規格品では味わえない温もりも感じられる。その独特の形といい、思わず手に取りたくなる可愛さを持つ製品だ。
「to・mo・niというブランド名は、一緒に製作する周りの人たち、そして製品を手に取ってくれたお客さんたち、と共に歩いていきたいと思ってつけたんです。お陰さまで最近は少しづつ認知度も上がって、取り扱っていただくお店も増えてきました。今はまだ、このラプカルだけですが、これからもお客さんと共に歩いていけるような製品を作っていきたいと思っています」
Mickle【ミクル】
http://www.mickle-jp.com
to・mo・ni
http://www.to-mo-ni.jp/
〒079-8423 北海道旭川市永山13条3丁目1-10
TEL:050-5523-8814 FAX:0166-25-6664 E-mail:info@to-mo-ni.jp
灯りのたね
http://www.akarino-tane.com
〒070-0027 北海道旭川市東7条2丁目4-14
TEL:0166-24-2447 FAX:0166-24-2447
高橋工芸
http://www.takahashikougei.com
〒070-0055 北海道旭川市5条西9丁目2-5
TEL:0166-22-6353 FAX:0166-23-2888 E-mail:info@takahashikougei.com
work studio 雅
〒078-1271 北海道旭川市東旭川町東桜丘166-9
TEL:0166-36-5636 FAX:0166-36-5636



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