五輪で考えさせられた、スポーツの面白さ
〝鳥の巣〟を赤く照らし続けた聖火が消え、北京オリンピックが終わりました。
日本の金メダル数は9個。前回アテネ大会の16個には及びませんでしたが、そのアテネ組が予想以上の奮闘を見せ、日本選手団としては健闘といえる結果だったと思います。全体で一番金メダルをとったのは、中国でなんと51個。アメリカの36個を大きく超えて、開催国としての努力の成果を見せ付けました。
北島康介の世界新や、ソフトボールの金メダルなど、今回の五輪のいくつかの山場では編集部も大いに盛り上がりました。そんなとき、何人か必ず、一切興味を示さず仕事を続けている人、というのがいます。実際には興味はなくとも、こういうときは流されるのが日本人。仕事を続けたのはある意味立派(?)、とも思いつつ、そこまでスポーツに興味がないのはなんなのよ?と聞いてみると「他人がやっているスポーツに、そこまで興味があるのはなんなのよ?」と逆に聞かれます。
そう言われると、それってなんなんだろう? という気にもなります。日本選手がメダルをとったりひいきのチームが優勝したところで具体的なメリットがあるわけでもなく、音楽や美術のように感動で心をふるわせるというのもちょっと説得力に欠けます。スポーツは、なにが私たちの琴線に響くのでしょうか。
記者Kが、これまで観た五輪でいちばん好きな場面は、バルセロナ五輪。女子マラソンで有森裕子の有名な「給水事件」です。ロシアのエゴロワとトップ争いをしていた有森は、給水のボトルを投げ捨てず、わざわざエゴロワの後ろに下がり、道のはしにかがんで置いたのです。
プレーとしては明らかなタイムロス。しかし、前の給水でボトルを投げ捨てたとき、ボトルが壊れたような音をたてたのを聞いた有森は投げ捨てませんでした。チームメートが用意してくれたボトルを粗末にしないこと、ライバルであるエゴロワにそれが当たらないようにという気遣い。有森は、勝敗の価値観を超えて、自分の美意識に従った。だからこそ、それは勝ち以上にいいプレーとして記憶に残るのです。
記者Kが考えるスポーツの魅力というのは、おそらくそういうことなんじゃないかな、と思います。スポーツをするのは機械ではなく、人間。だからこそ、競技のひとつひとつにはドラマがこめられていて、そこが見る人の心をゆさぶるのでしょう。
青春時代の自由を犠牲にした共同生活の成果を存分に見せた新体操日本代表、日本の柔道精神にこだわり一本勝ちにこだわった谷本歩実、祖国への恩返しのために記録を気にかけなかったウサイン・ボルト、バトンパスにテクニックの粋を集めることで脚力の不利を見事に埋めた男子400mリレー日本代表…。今回の五輪でも感動したのは、選手の美意識を感じるとき、そして、そこにドラマを感じるときでした。
スタートも終わりも、メダルの数の話を書いてしまった今回の五輪のブログですが、本当に見たいのはメダルの数よりもこういうことなんだな、と再確認。4年後、ロンドンのプレビュー記事をつくるときは、人間にもっともっとクローズアップしたいと思います(K)。
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